内山によれば、その作文を自慢する時の雅人の顔は見たことがないと言っていました。
それくらいその作文の内容が嬉しく、また、コウジのことを愛していたのでしょう。
失踪する前や死ぬ前に、その嬉しさを直接コウジや家族に伝えられていたら何かが変わっていたかもしれません。
それでも言葉では何も伝えなかった雅人の行動に、不器用な愛情が感じられます。
13年間離れていても雅人は家族を愛していた
雅人は、とても愛情深い人間です。ただそれを表に出すのが苦手なだけでした。
離れている13年間の間ずっと甲子園をチェックしていたのも、コウジとの約束を忘れていなかったからです。
雅人の死後、葬式の場でそのことを知った息子たちの心情は、とても混沌としていたことでしょう。
それほどまでに、雅人は不器用で愛おしい人物だったのです。
手紙からも伝わる雅人の不器用さ
雅人が不器用で愛情深い人間だったことは、生前マサシに託した手紙からも読み取れます。
なぜ手紙を預けたのか
雅人はマサシに手紙を預ける際に、家族へ渡すのではなく葬式の場で読み上げて欲しいと頼んでいます。
なぜ、家族に渡すことを選ばなかったのでしょうか。それは、この手紙に書いている内容を確実に家族に伝えたかったからです。
さんざん苦労をかけた自分は、家族から嫌われていると思っているはず。
家族に手紙を渡してしまったら、もしかしたら読んでもらえないかもしれません。そこで、マサシに手紙を託したのです。
雅人は最期に家族へどうしても感謝を伝えたかったのでしょう。
手紙という形にしたのも、言葉ではきっと上手く伝えられる自信がなかったから。不器用な雅人らしい想いの伝え方でした。
息子たちのこれからを思いやる雅人の最期の教え
いたるところで心を集めよ
引用:blank13/配給:クロックワークス
手紙に書かれていた息子達へのメッセージは、父からの最初で最後の教えです。
自分が辛い状況でも友達を助けていた雅人の葬儀には、本当に彼のことを慕う人間が集まってくれました。
彼は、本能的に価値のある人生とは何かということを知っていたのです。
そして、息子達にも本当に豊かな人生とは何かということを教えたかったのだと思います。
短くとも的確なこの言葉は、何もしてやれなかった息子達への愛情あふれる一言です。
本当に豊かな人生とは
人の価値を教えられた気がしたわ
引用:blank13/配給:クロックワークス
この作品は、価値のある人生とは何かということを教えてくれる映画です。
葬式という人生のラストイベントで、自分は本当に周りから惜しまれる人生を歩めるのか…。今後の人生の生き方を考えさせられます。