出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B01MZFJVVJ/?tag=cinema-notes-22
映画『ぼくのおじさん』は北杜夫原作の児童文学を山下敦弘監督が映画化した作品です。
主演の松田龍平と大西利空の脇を真木よう子や寺島しのぶといった実力派の個性派俳優が固めています。
小学生の雪男と屁理屈おじさんの妙な凸凹コンビを中心とした日常の物語です。
作文コンクールに応募した雪男のお陰でハワイへ旅行に行くことになった一家は不思議な体験をします。
本稿ではエンディングで記念写真にUFOが写り込んでいた理由を考察していきましょう。
またおじさんがハワイでつかまった理由やエリーの悩みのタネなども考察していきます。
余裕がなくなった現代へ
本作を見ていると、多くの人は妙に余裕というかゆとりがあると感じるのではないでしょうか。
それもその筈、本作は元々昭和時代の高度経済成長期の豊かだった時代の日本がモデルです。
特別大きな事件があるわけでもなく平和な時間が過ぎていく感覚は現代において新鮮ですらあります。
情報化社会となって只管に効率化ばかりが求められ、核家族化が進み人の繋がりも薄くなっている昨今。
そんな余裕がない現代の人々に向けて下らなくも愛おしい日常の大切さを実にユーモラスに描いています。
居候おじさんと冷静な小学生コンビの漫才にも似たお話がどのような世界を見せてくれるのでしょうか?
記念写真にUFOが写り込んでいた理由
本作のエンディングシーンは記念写真にUFOが映り込むカットと共に締めくくられています。
伏線らしきものがあるわけでもないこのUFOの理由は何だったのでしょうか?
ネタバレ込みでじっくり考察していきましょう。
続編の含み
まず一つ目に考えられるのが続編があることを匂わせているということです。
このUFOの前に雪男の担任のみのり先生の台詞がありました。
作文の続きが読みたい
引用:ぼくのおじさん/配給会社:東映
即ちこのUFOの謎について居候おじさんが解き明かす展開の構想があったものと思われます。
実現こそしていませんが、「それはまた別の話」という謳い文句も続編のニュアンスでしょう。
ここからどのような物語が展開されるのかという想像の余地を生み出すことに成功しています。
未知なる世界への招待
二つ目にUFO自体が”未知””非日常”の象徴として描かれているので、未知なる世界への招待でしょう。
本作で描かれたのはあくまでも”日常”でしたが、そんな日常の傍にも非日常はひっそりとやってきます。
居候おじさんは大学の非常勤講師として哲学を勉強しているため、普段は非日常の空想ばかりです。
そのようなおじさんのぶっ飛んだ空想がUFOという存在を引き寄せて映ったのかもしれません。
単なる役立たずの穀潰しというだけではなく、発想が人一倍ぶっ飛んでいる証拠でしょう。
偶然が重なったハワイ旅行
そして三つ目に本作のメインで描かれるハワイ旅行自体が偶然に次ぐ偶然が重なったせいでありましょう。
まず雪男が作文コンクールでハワイ旅行を当てる時点で凄い偶然ですが、更に青木とエリーまで居合わせたのです。
見方によってはご都合主義とも取れるハワイ旅行ですが、しかしこの偶然こそ本作の真骨頂ではないでしょうか。
一見平和な日常を淡々と描いているようで、要所要所で非日常的なぶっ飛んだ展開が次々と繰り出されます。