またその他大勢の家畜ではなく、オクジャとしての個性も確率することでしょう。
あえて名前を付け愛を注ぐ描写を加えたのは、生き物としての存在を引き立たせる為といえます。
生産者社会への警告
ミランド社の屠畜場は、まさに生産社会の現れではないでしょうか。
ティルダ・スウィントン演じるナンシーにとってスーパーピッグたちは物にすぎません。
生きものを物のように大量に生産し屠畜する…、命の軽視を警告しているように感じます。
愛のある耳打ち
ミジャとオクジャは元の生活に戻りましたが、以前のような無邪気さはなく大人としての成長を感じます。
オクジャが耳打ちをするシーンは、観る者が自由にオクジャの言葉を想像出来るようになっているのです。
ありがとう、これから頑張ろう、この映画をみて感じたそれぞれの思いがオクジャのセリフとなって脳裏にのこるのではないでしょうか。
ここでミジャが与えた愛は言葉となって彼女に戻ってきたのです。
オクジャは特別な豚ではない
淡々と豚が屠畜されていくシーンは、オクジャに人格を与えることでより生々しく観る者の心を揺さぶりました。
オクジャが屠畜される順番を待つ時に流れる映像は、胸を締め上げます。
人間のエゴが浮き彫りになる瞬間でもあるのです。
本作品ではオクジャが特別というわけではなく、どの生き物も尊いのだということを伝えているのでしょう。
自分の子供を助けたいという親豚の行動は、人間と何も変わりません。
オクジャを通して他の豚たちを観ると気軽に口にしている食べ物にも敬意を払うべきだと感じるのではないでしょうか。
ALFは実在する動物愛護テロリスト
本作に登場するALFは実在する団体で、場面によっては行動理念も素晴らしいものです。
しかし彼らは決して正義の団体ではありません。
自分たちの理念を通したいだけ
動物解放戦線(ALF)は動物の犠牲を阻止するために、手荒な手段をとる団体です。
動物の権利を提唱する過激派組織
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/動物解放戦線
劇中で自分のミッションをクリアしたいがために嘘をつくケイの姿が描かれていました。
また行き過ぎた価値観を押し付ける一面もあり、動物たちの為に行動しているのか、と疑問を投げかけています。
自分たちの理念が最優先であるALFもまた、歪んだ資本主義社会の一端を担っている点でミランド社と共通しているのです。
両極端な価値観が登場する意味
非人道的で、自然や生命の尊さを完全に無視したミランド社に対して、ALFは動物愛護を訴えています。
この両極端な価値観の対峙をミジャやオクジャの視点から観ると、どちらも同じくらいにいびつで滑稽なものです。
ビジネスとして命を操作し、自然の摂理をねじ曲げるミランド社。