出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC31G1/?tag=cinema-notes-22
映画『女の一生』は文豪ギ・ド・モーパッサンの原作小説をステファヌ・ブリゼ監督が映画化した作品です。
2016年版以前にも1928年・1953年・1958年・1962年・1967年と既に5作品もの解釈で物語が作られています。
キャストは主演のジュディット・シュムラとスワンアルローを中心に個性派俳優達によって演じられました。
第73回ヴェネツィア国際映画祭にもノミネートされ、それぞれ以下を受賞しています。
ルイ・デリュック賞作品賞
第73回ヴェネツィア国際映画祭FIPRESCI賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/女の一生_(2016年の映画)
物語は19世紀のフランスを舞台にうら若き17歳の少女ジャンヌと麗しい美青年ジュリアンの出会いから始まります。
様々な女性たちの人生が描かれる本作ですが、今回はジャンヌが母の手紙を全て焼いた理由を考察していきましょう。
また彼女が息子ポールを信じて疑わない理由や孫を抱いた彼女の心情も併せて紐解いていきます。
結婚はギャンブル
本題の考察に入る前に、そもそも何故本作はこうも数々の解釈で物語が作られるほどの人気作なのでしょうか?
それは恐らく本作が「結婚はギャンブル」という人生の本質を当時19世紀ながらに鋭く見抜いていたからでしょう。
よく「結婚は人生の墓場」などといわれますが、ジャンヌは恋の延長線上だけで結婚して悲惨な目に遭います。
夫ジュリアンの浮気・母の病死で発覚した不貞・息子ポールの破産等々苦労と裏切りの連続です。
かといってジャンヌは劣悪な環境から抜け出すことも出来ず、よかれと思ってしたことは全部裏目に出ます。
幸せだったのは出会いの場面だけで、後は悉く不幸という不幸の連続に見舞われる…これが結婚の現実です。
いざ蓋を開けてみなければどんな生活になるか分からない人生最大の賭けが結婚だと本作は教えてくれます。
そんなジャンヌはこの地獄の結婚生活の果てに何を見るのかを追っていきましょう。
母の手紙を全て焼いた理由
本作の中盤にはジャンヌが母の病死に際して手紙を見て全て焼いてしまうシーンがあります。
果たして彼女はどういった理由や気持ちでこの手紙を焼いたのでしょうか?
二つの浮気
まず一つ目にあったのは母の浮気ですが、その前に夫ジュリアンも伯爵夫人と浮気をしていました。
つまり自分の身内が揃って二人も浮気をしていたというダブルパンチに耐えられなかったのです。
どちらか一方だけならまだ耐えられたかも知れませんが、二人ともなるともはや呪いか祟りでしょう。
今現在であればどちらも慰謝料を請求され絶縁されてもおかしくないようなことをしています。
幸せだった筈の結婚生活に最初に降りかかった試練にしては余りにも酷なものでした。
浮気性の血が半分流れている
二つ目はジャンヌの体の中にそんな最低な浮気性の母の血が半分流れているという事実です。
これは唾棄すべき事実であり、その血が浮気性のジュリアンを引き寄せたのではないしょうか。
少なくともジャンヌにとってはそう思えたからこそ手紙を全て焼いてしまったのです。
そしてまたジャンヌ自身も母のような浮気性の女になってしまわないかを恐れていたのでしょう。
非常に呪われた不幸な家系に生まれ不幸な家系と結ばれてしまったことがジャンヌの運の尽きでした。
更なる不幸の連鎖
そして三つ目にここで手紙を燃やしたことが後々になって更なる苦難の連続となったからです。
ジャンヌはこの後伯爵夫妻とジュリアンを銃殺に追いやるという流血沙汰へ発展させました。