出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07GX2CB4D/?tag=cinema-notes-22
映画『終わった人』は内館牧子の原作小説を中田秀夫監督が2018年に映画化した作品です。
主演の田代壮介を舘ひろしが、そして妻の千草を黒木瞳が演じています。
物語は出世コースから外れた元エリートの銀行マンの定年退職後に纏わるお話です。
仕事一筋で趣味らしい趣味を持たなかった主人公がスポーツジムである女性と出会い恋をします。
しかも新しいビジネスチャンスまで彼の中に舞い込み、予想外の第二の人生が始まるのです。
舘ひろしの演技力の高さは本作の評価に大きく貢献し、以下を受賞しました。
第42回モントリオール世界映画祭最優秀男優賞受賞
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/終わった人
本稿では壮介が社長になることを決めた真意をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、千草が離婚しない理由や悩み相談後に久里がすぐ帰った理由なども併せて見ていきます。
働きアリ国家・日本
本作はサラリーマンの定年退職後がテーマですが、背景にあるのは働きアリ国家・日本の社会構造です。
それまで会社に依存し続けた人が仕事を辞めて尚満足出来ないのは働かせ過ぎる日本の環境にあります。
主人公の田代壮介は正にその典型的な働きアリの代表だったのではないでしょうか。
しかも彼は出世コースから外され子会社勤務を余儀なくされたままの負け組人生を受け入れてしまった人です。
そんな人が定年退職後に舞い込んできたセカンドライフをしっかりやり遂げることが出来るのでしょうか?
日本人であれば誰しもが考える「定年後」「老後」の話を面白おかしく描く本作の裏にあるものを見てみましょう。
社長になることを決めた真意
壮介はスポーツジムでの出会いが元でゴールドツリー社の社長から顧問として誘われまずが、その若社長が急死します。
その急死により壮介が社長に後任として就いたのですが、なぜ彼は社長になると決めたのでしょうか?
その真意を物語の流れや彼の心情などから見ていきます。
一筋の光を見出した
まずここに至る流れとして、初めて壮介は相手の会社からスカウトされるという経緯がありました。
更に彼は顧問としての適性が非常に高く、仕事も順調だったことが影響したのでしょう。
このような経験はそれこそ銀行マンとして勤めていた時にはまるで感じられなかった楽しさです。
出世街道から外され、細々とうだつの上がらないサラリーマン人生を余儀なくされていました。
そんな壮介にとって老後で初めて自主性・主体性をもって楽しく仕事が出来る環境でした。
つまりこの仕事場で初めて壮介は「仕事の楽しさ」を味わうことが出来たといえます。
適材適所を履き違えた愚かさ
この流れを踏まえて社長就任に描かれているのは適材適所を履き違えた壮介の愚かさです。
妻の千草に「顧問と社長は違う」と反対までされていたのに、彼は決意してしまったのです。
千草の指摘するように、社長には社長の、王には王の器があって人それぞれに違います。
顧問として実力を発揮していたので壮介の本質は優秀な補佐だったのではないでしょうか。
そこを履き違えて事業が上手く行ってるからと出過ぎた真似をしたからこうなったのです。
そこには恐らく出世街道から外された恨みが長年蓄積していたこともあるでしょう。
案の定事業は即座に上手く行かなくなり倒産、多額の借金を抱え込むことになりました。
運だけでなった者と下準備をしていた者
そして三つ目に、壮介の会社の倒産と反比例する形で千草の店の独立が明らかとなります。