だからこそこの戦いにおいては心中という、何も生み出さない結末を迎えました。
窮鼠猫を噛む
そして何よりこのシーンが一番に強く示しているのは窮鼠猫を噛むというメッセージではないでしょうか。
カティヤは決してサイコパスでも政治的確信犯でもない、本当にごく普通の優しい女性であり母親でした。
法廷で勝てなかったからといって裏で卑劣な悪事を行ったわけでも狂気を宿していたわけでもありません。
そんな彼女でさえ爆弾テロ一つで精神も肉体もボロボロに追い詰められれば心中という究極の選択に出るのです。
普段穏やかな人ほど怒らせると怖いといいますが、カティヤの場合も正にそのような人なのかもしれません。
いずれにしても、無力な筈の一般市民が追い詰められる時のリミッターの外し方が如何に危険かを示しています。
ホテル支配人が戻って来た理由
カティヤがは裁判に負けた後メラー夫婦の居場所を突き止めるためにギリシャのあるホテルに行き着きます。
そこで彼女は何故かそのホテル支配人に追いかけられるのですが、その理由は何だったのでしょうか?
テロリストが経営してるホテルだった
一つ目にそのホテルを経営していたのがメラー夫婦のバックについていた極右のテロリストだからでした。
とはいっても、カティヤは決してその極右のテロリスト・マクリスへ報復しようとしていたわけではありません。
しかし、マクリスにしてみればカティヤにホテルの居場所がバレてしまうのは不味いことになるわけです。
だからこそ必死に車で追いかけ、またカティヤも必死に車で逃れるという流れになりました。
メラー夫婦の居場所を守るため
二つ目の理由がマクリスが守ろうとしていたものがホテルよりも寧ろメリー夫婦の居場所だったからです。
この後カティヤが偶然にもマクリスの車を見つけて尾行したことで居場所はバレてしまいました。
マクリスが何よりも一番恐れていたのはこの事態であり、要は墓穴を掘ってしまった格好です。
まあマクリスもカティヤもそれぞれに自分の存在が迂闊にバレてしまう辺り詰めが甘いのですが…。
そして事態はマクリスが危惧したようにカティヤの自爆テロという最悪の形へ発展しました。
アメリカン・スピリット
もう一つ、これは副次的要素として、カティヤはアメリカン・スピリットというタバコを買い求めていました。
これが何なのかというと、カティヤは家族を失ってから薬物を使用するようになったという経緯があります。
このシーンは即ち彼女が純正100%のアメリカのタバコを買い求める位に引き返せない所まで来たということです。
細かいようですが、この僅かなシーンでカティヤがどのような心境・立場に置かれているのかを表現しています。
こうした小道具一つで彼女の心理や性格の変化を描いているのではないでしょうか。
一度復讐を中止した理由
カティヤは自爆する前のシーンで一度爆弾をキャンピングカーに仕掛けますが、彼女は一端中止します。
もはや裁判で勝てないからこそ報復へ出たのですが、ここで中止した理由は何でしょうか?
冷静になった
まず一つ目にカティヤは自分がやっていることの恐ろしさに気付いたのではないでしょうか。
彼女自身が忌み嫌い憎んでいるはずの爆弾テロを自分が仕掛ける側に回ってしまったのです。