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映画『青鬼』の原作となったフリーゲーム「青鬼」は、動画サイトのゲーム実況で取り上げられたのを皮切りに人気が拡散していきました。
そしてノベライズを経て実写映画化が決定。
制作陣はフリーゲームの実写化の需要を低く見積もっていたようで、上映映画館は全国でたった9館という控えめなスタートを切りました。
しかし映画版『青鬼』の面白さはSNSで話題となり、上映全館で全回満席という異常事態に発展。
その後拡大公開され、最終的には興行収入2億円という大ヒットを遂げました。
映画『青鬼』は原作ゲームや小説をそのまま実写化したわけではなく、ターゲットである若年層を取り込むための工夫がなされています。それこそが大ヒットの要因だといえるでしょう。
そこで今回は、原作ゲームや小説と映画の違いや、結末に込められた深い意味を探ります。
原作はフリーゲームだった?!
映画『青鬼』の存在をSNSの情報で知った方の中には、原作がゲームだということを知らなかった方も少なからずいたようです。原作ゲーム「青鬼」はどんな内容なのでしょうか。
原作となったのは個人制作フリーゲーム
プログラミング知識がなくてもゲームが作れる「RPGつくーる」で制作されたホラーゲーム「青鬼」。
実はこのゲームを製作したのはゲーム会社ではなく、たった一人のクリエイターです。個人制作の無料ゲームが、興行収入2億円の映画を生み出したことになります。
ゲームのストーリーは…ない?!
ちょっとした好奇心から肝試しに入った館で、少年たちが青鬼と遭遇するというのがゲームの設定です。
神出鬼没の青鬼から逃げつつ、いくつものミッションをクリアして脱出を試みる流れになっています。
このゲームに設定はあっても、明確なストーリーがありません。またバージョンによって埋め込まれたトラップや結末が異なります。
つまり映画『青鬼』は、ゲームの設定と世界観を前提にしているものの、ストーリー自体はゲームに沿って展開されているわけではないのです。
真実は小説に描かれている?
小説版「青鬼」は全6巻。実は小説の中に、ゲームでは分からなかった青鬼の正体が描かれています。
青鬼の正体は生物学者
小説で描かれている青鬼の正体は「人間」。少年たちが迷い込んだ洋館の主で、病気の娘を助けられなかったことを悔いている父親です。
この設定が付加されることにより、何となく無機質な印象のゲームとは全く違う、血の通った人間味のある作品へと昇華しました。
化け物扱いされる青鬼が写真を宝物のように大切にしていたり、綺麗好きで館の掃除を欠かさなかったりと、モンスターらしからぬ姿を見せているのが小説版「青鬼」です。
それでも青鬼は青鬼
へとへとになりながら逃げ続け、知恵を絞って館を脱出しようとする少年たちは、青鬼の正体を知ったことで哀れみや同情といった感情を抱きます。
しかし情けをかけても、青鬼に捕まれば命を落とすという事実は変わりません。ですから彼らは必死で逃げ続けます。
大切な人を喪った青鬼の悲しみや、少年たちの複雑な心模様を描いた点が、小説の大きな特徴といえるでしょう。
ゲーム・小説・映画で何が違う?
ゲーム、小説、映画の三媒体の特徴を更に深掘りすることで、各々の違いや「見せ場」が明確になります。
ゲームでは正体をにおわせない
ゲームにおいて青鬼は別世界の生き物です。人の心を持たないモンスターであり、恐怖の対象として描かれています。
青鬼の正体については明かされておらず、青鬼のゲーム愛好者はこぞって青鬼の正体を推理し、ネット上に書き込みました。
そのほとんどが、意味もなく人間を襲うモンスターだとする意見でしたが、一方で実は人間なのではないかという考察も少なくありませんでした。
正体不明という点が、ゲーム「青鬼」の人気を広める一つの要因になったと考えられます。
小説ではキャラクターに命を吹きこむ
小説では、単なるアイコンに過ぎなかった登場人物に肉付けがなされています。
いじめっ子の卓郎といじめられっ子のシュンの間の微妙な緊張感や、いじめグループの美香やタケシの意地悪さなども丁寧に描写していますが、小説版の最大の特徴は青鬼の悲しい過去に言及している点でしょう。
映画では登場人物に注目
映画版は小説版のストーリー展開に近く、登場人物がしっかりとした個性を持っています。