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映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』はヒキタクニオ原作のエッセイを2019年に映画化した作品です。
監督は細川徹、主演は松重豊と北川景子という異色の年の差コンビで演じられました。
それまで名脇役であった松重さんが初主演であったという意味でも注目が集まった作品です。
妊活を始めた男性が夫婦で協力して懐妊トレーニングを行い49歳で子どもを手にするまでを描いています。
原作者自身の体験談に基づくこともあり、女性とは違った妊活の様がコミカルで多くの共感を得られました。
本稿ではヒキタクニオが不妊治療を始めた理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、子供ができない理由や夫婦で挑んだ試練も併せて掘り下げていきます。
松重豊のターニングポイント
まず本題に入る前に本作で特筆すべきは主演が松重豊であるということに尽きるでしょう。
決して華のあるタイプではないものの、脇役の存在感によって初めて味が出るタイプです。
本作でいえばサチ役の北川景子という圧倒的な華が上手く松重豊の味を引き出していました。
物語の主導権を握っていたのは間違いなく若くてパワーがある北川景子の方でしょう。
しかし、本作のヒキタクニオは嫁に叱咤激励を受けながら妊活に励む特殊な人です。
コミカルながら複雑なこの人物は硬軟併せ持つ松重豊にしか演じられません。
彼の演じるヒキタクニオ像に目を向けつつじっくり考察していきましょう。
不妊治療を始めた理由
本作のメインテーマはタイトルにもあるように男性の不妊治療です。
何故ヒキタクニオはこの不妊治療・懐妊トレーニングを始めたのでしょうか?
サチの心境の変化
大前提として、この不妊治療はクニオではなくサチが提案したのです。
きっかけは友人の子供が自分に愛らしい仕草を見せたことで子供への考えを変えました。
何事も経験しないと分からないこそやってみようと思ったのでしょう。
サチという女性は意志の強さといい行動力といい兎に角「経験」を重視する人です。
そんな彼女が実際に子供と親の楽しそうな様を見て子供を持ちたくなるのは当然の心理でしょう。
勝負日毎にやる
二つ目に懐妊の為の具体的な手段をしっかり立てていたこともまた大きいでしょう。
サチは必ず自分が妊娠しやすい日を選んでクニオとの子作りに励んでいました。
しかも、サチの父である大学教授の和夫にまでその報告をしに行っているのです。
クニオに拒否権・選択権がないのですが、ここに彼女の覚悟と決意が見て取れます。
その位子作りに命と意志とエネルギーを燃やしていることが窺えるのではないでしょうか。
北川景子の演技力
そしてこのサチの役柄を嫌味無く演じられるのは女優・北川景子の賜物ではないでしょうか。