これは現実社会でも存在する恋の形なのではないでしょうか。
自分の進む道で、憧れの人がいたらその人に恋をしたような感覚になってしまうものです。
一方竹本の恋心は、はぐみ本人に向いているような気がします。
ありがとうの意味
本作では告白に対して「ありがとう」という言葉を使用しています。
関めぐみ演じる山田の気持ちに真山が答えたシーン、竹本の告白にはぐみが答えたシーン。
いずれもその後付き合ってはいないのです。
気持ちを伝えてくれたこと、自分を思ってくれたことに対しての「ありがとう」なのでしょう。
ラストシーンで恋は成立していませんが、皆の友情はこの先もずっと続いていくのではないでしょうか。
まさに青春の欠片を切り取ったような作品です。
はぐみがスランプになった理由
劇中ではぐみは完全なスランプに陥ってしまいましたが、その理由は一体何だったのでしょう。
思いもよらないキスのせい
直接的な原因は森田のキスではないでしょうか。
音や感情をそのままキャンバスにぶつけていたはぐみにとって、複雑で処理しきれない思いが作品に影響を与えていたのでしょう。
森田の作品に愛情を感じていたはぐみにとって、キスという出来事は予期出来ないパプニングだったのでしょう。
純粋過ぎるゆえに、心に出現したモヤモヤを消すことが出来なかったと考察出来ます。
絵への注意を受けたから
彼女は芸術を愛しています。
真っすぐでゆるぎない、心底うらやましいよ
引用:ハチミツとクローバー/配給会社:アスミック・エース
芸術とビジネスの間で苦しむ森田のセリフですが、いいかえれば彼女はビジネスには向いていない芸術家といえます。
そこにお金という付加価値を付けられると、どうしていいのかわからない状態になるのでしょう。
幸田先生のはぐみの絵を否定する言葉は、純粋なはぐみの心を真っ黒に染めてしまいました。
それは、黒一色の彼女の絵にも表れています。
どんな絵を描けばいいのか、自分を見失ってしまったのです。
思い続けることを描いた温かな作品
原作者羽海野チカが「ハチミツ(スピッツ)」と「クローバー(スガシカオ)」の歌を聴きながらタイトルを決めたといわれる本作。
甘い青春と見つからないクローバーが印象的です。
5人の恋はそれぞれすれ違いましたが、それでも想いを捨てない姿に心が温まります。
青春時代を思い出したい人や、恋が上手くできない人にオススメしたい映画です。
それぞれの想いを考えながら、観返してみてはいかがでしょう。