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今や『戦場のメリークリスマス』と聞くと、真っ先に坂本龍一の楽曲を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
あの有名な楽曲も本作の為に作られた究極の愛の歌といえるでしょう。
映画はイギリスの作家ローレンス著の「影の獄にて」という自叙伝を元に作られており、鬼才大島渚監督の代表作です。。
劇中のハラのセリフ「Merry Christmas, Mr. Lawrence」は英題として取り上げられるものですが、このセリフの真意は何なのでしょう。
またセリアズの処刑の原因となったキスについても深く考察していきます。
戦争映画の中で、男同士の愛を描いた異質の名作を堪能していきましょう。
セリアズがヨノイにキスをした理由
劇中デヴィット・ボウイ演じるセリアズは突然ヨノイにキスをしています。
この場面は本作で最も有名なシーンといえるでしょう。
このキスの意図については、様々に考察されています。
人間としての許しのキス
本作で描かれているのは戦闘ではなく、戦争に苦しめられている人間の心です。
平和な時代だったら苦しまなくていいことを苦しんでいるヨノイやハラの心の葛藤が描かれています。
彼らは、本心ではやりたくないことを規律だとか神という言葉に縛られやらざる負えない人々です。
捕虜長を殺すこともヨノイは勢いに任せて決断しているように観えます。
この時日本軍は敗戦の色が濃く、敵の能力を無理矢理搾り取り戦争を戦っていたという背景があります。
だからこそ武器に詳しい捕虜が必要だったのでしょう。
上からの命令に必死に答えようとする、ヨノイが暴力的になるのは仕方のないことです。
人間として間違った決断をしていたヨノイに対して、許しのキスをしたと解釈出来ます。
キリスト教的な考え方ですが、原作者のローレンスがイギリス人であることを考えると納得できる答えです。
隔たりを壊すキス
私は個々の日本人を恨みたくない
引用:戦場のメリークリスマス/配給会社松竹,松竹富士,日本ヘラルド
ローレンスの上記の言葉にセリアズは頷いています。
敵味方や信じる神の違い、物の価値感などに大きな隔たりがある様子が描かれていますが、その隔たりを壊したキスとも考察できます。
人として好意を持っている、その表現の一つだったのではないでしょうか。
愛情を示すキス
本作の軸となっているのは「愛」であり、男性同士の「愛」も深く描かれていました。
しかし当時は同性同士の愛は罪であり、規律こそが全ての時代です。