しかし、2010年には財政が圧迫し政権が変わったことを機に、様々な福祉手当や社会保障の削減を大きくし弱者へ苛酷な生活を強いるのです。
原因は欧州連合間の移民問題です。比較的経済が豊かだったイギリスに多数の移民が入ってきたことで、経済的な弊害が起きてきたからです。
隣人を助ければ、人生をも変えられる
連合国からの移民を受け入れたことで国民の不満が増幅してしまったのは確かですが、EUを離脱するイギリスはどう変わっていくのでしょう?
EUに留まっていたら隣国の人々を助けたことで何か違った変化もあったかもしれません。
ダニエルはチャイナと良き隣人関係を保ちネット申請を助けてもらい、ケイティ親子を助けたことで不服申し立ての代理人を探してもらえました。
ダニエルが典型的なイギリス人だとしたら、イギリスという国は頑固な国だけど隣国に善くしていれば困ったときに助けになってくれたはずです。
人としての尊厳を忘れないこと
人としての尊厳を忘れないでいるために、第二次世界大戦後のイギリスがとった社会保障制度の土台があります。
それは「窮乏、病気、無知、不潔、怠惰」の5大巨悪を取り除くことが大前提で「ゆりかごから墓場まで」が誕生しました。
意地や頑固なだけでは尊厳は守れません。死守するには最低限の社会福祉が必要ですが、本作の制作当時のイギリスはそこを忘れていたのです。
今どうしても伝えたい物語
日本はイギリスの社会福祉制度をモデルにしているところもあり、本作を観ると自国を見るような気持ちにもなります。
さて、慣用句に「働かざる者食うべからず」といった言葉がありますが、逆に「情けは人の為ならず」という言葉も聞いたことがあるでしょう。
これを間違った解釈をされる人も多くいますが、正しい意味をご存知ですか?
「人に対して情けを掛けておけば,巡り巡って自分に良い報いが返ってくる」という意味なのです。
この映画はまさにこのことを指しているのです。ダニエルは良い報いを得る前に亡くなります。
ケン・ローチー監督が伝えたかったのは、イギリスもそうならことを願いに込めこの作品を撮ったのではないでしょうか。