出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B084YYQMN3/?tag=cinema-notes-22
『沈まぬ太陽』は山崎豊子による同名長編小説を若松節郎が映画化したものです。
本作は日本航空で働いていた社員の体験に基づく、リアリティ溢れる内容…。
ゆえに、フィクションと謳ってあるものの実際の社会の闇にメスを入れている作品といえるでしょう。
劇中、主人公の恩地は会社の不条理を何故受け入れ続けたのでしょう。
彼がナイロビ行きの決断をした真意や、動物園の鏡のシーンが示す意味も深く考察していきます。
会社の不条理に従い続ける恩地の心
恩地は会社の不条理な条件に耐え従い続けていますが、なぜ逃げだそうとしなかったのでしょう。
労働組合の為
彼は海外赴任を続ければ続けるほど会社へ詫びなければ戻ることができない、といった現実を突きつけられています。
しかし彼がそこで踏ん張ったのは、共に戦う労働組合の為ではないでしょうか。
自分が屈してしまえば、仲間たちは何を思うのか…。
仲間たちに勇気を与える為にも、どんな不条理を突き付けられても自分が辞めることは出来なかったのでしょう。
自分が辞めることで喜ぶ者がいる
恩地が不条理に屈して国民空港を辞めてしまえば、その裏で喜ぶ者たちがいます。
まっとうに生きていない彼らが喜ぶのは許せない、そういう反骨心もあったことでしょう。
正しいことをしている自分が身を引き、間違ったことをしている者だけが笑う、そんなことが許せなかったのです。
自分のプライド
恩地には強いプライドがあったのでしょう。
それは行天とは異なるプライドです。
自分が不当な扱いを受けるのが許せない、という自分本位なプライドではありません。
彼は不条理な指令によって自分の信念が曲がることを嫌がったのです。
会社の不条理に従ってはいましたが、屈することはなかったのでしょう。
動物園の鏡
劇中に登場する動物園の鏡は何を意味しているのでしょう。
全てを支配しようとする人間
THE MOST DANGEROUS ANIMAL IN THE WORLD
引用:沈まぬ太陽/配給会社:東宝
ニューヨークの動物園に置かれた鏡には、世界で最も危険な動物として鏡が設置されています。
なかなかパンチの効いた展示です。
動物園側の趣旨としては世界中の動物を支配し檻に閉じ込めてしまう人間を表現していたのではないでしょうか。