だからどちらかといえば嘘つきのオオカミだったのはエリカよりも恭也の方だったのではないでしょうか。
そんな彼がエリカとの交流の中で段々素の不器用ながらも真っ直ぐで優しく熱い男へ戻っていくのです。
恭也のキャラクターはこの瞬間に一気に本質へと近づいていきました。
彼氏役を快諾した目的
終盤に向けて変わった恭也ですが、当初エリカの彼氏役を引き受けた時はワルの腹黒王子でした。
余りメリットがあるとも思えないこの偽のカップルの関係を何故恭也は快諾したのでしょうか?
その目的をエリカや周囲との関係性も含めて見ていきましょう。
本当に暇つぶしか?
恭也はエリカと偽のカップルを演じる目的を「暇つぶし」だと言っていましたが、本当にそうでしょうか?
その後恭也の言動・行動が実はやや斜に構えた形でのエリカのフォローを的確にこなしているのです。
マリン達が拘束プレイという話題を振った時も上手く制して自分を下の名前で呼ばせています。
また、上記したプレイボーイ神谷の魂胆を見抜いていた時はぶん殴ってでも守り切ったのです。
そう、表現が間接的なだけで実は恭也はこの時点で既にエリカへと惹かれていることが分かります。
俗にいうツンデレなのですが、意外と恭也の方がこの関係をノリノリで楽しんでいることが分かるのです。
可愛くて純粋な人が好き
そんな恭也の実が凄く良い人であることは水族館のデート、そしてその後の犬を可愛がるシーンで見られます。
エリカはここで初めて恭也の偽悪的な振る舞いや言葉遣いが全て好意の裏返しであると気付くのです。
だから実際は目的などという大層なものではなく、単純に可愛くて純粋な人が好きなのでしょう。
つまり表面上侮辱の言葉だと思われた「犬」は「可愛くて純粋である」という最高の褒め言葉でした。
そのことにエリカが気がついた時、2人の関係性は既に偽物ではなく本物の愛へと近づきつつあったのです。
エリカの覚悟を試す
その後恭也はエリカの覚悟を試すような意味合いの発言が多くなります。
それが見て取れるのが後半のこの台詞です。
この猿芝居いつまで続ければいい?俺がこんな甘い言葉言うわけねえだろ
引用:オオカミ少女と黒王子/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
恭也は半分冗談半分本気でエリカとの付き合いを真剣に考えていました。
それは彼の疲れ気味の表情やトーンが物語っています。
そんな偽りの関係性を続ける虚しさを見抜いていたのではないでしょうか。
そのことを姉・怜香のアドバイスによって本物だと悟り、上述した神谷との訣別に至ったのです。
偽りの関係から始まったものの、心持ちは凄く本気だったことが物語の流れから分かります。
最後に走り出した理由
そうしてお互いの気持ちに素直になれた恭也とエリカは最後に想いを伝えて見事に結ばれます。
最後は恭也がエリカを引っ張って町に向かって走り出しましたが、その理由を考察していきましょう。
エンドロールの南京錠
結論からいえば、エンドロールで愛の鍵モニュメントにかかっている南京錠が全てを物語っています。
恭也はエリカを連れて2人の愛を永遠のものにするために愛の鍵モニュメントに向かったのではないでしょうか。
決して劇的とまでは行かないものの、エリカと恭也の関係は決して平坦で順風満帆なものではありませんでした。