出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00WSB9ZHS/?tag=cinema-notes-22
映画『ハルカの陶』は西崎泰正の同名コミックを2019年に実写映画化した作品です。
監督は末次成人、主演は奈緒と平山浩行、更に脇を村上淳や笹野高史など実力派で固めています。
岡山県備前市を舞台に備前焼に魅了されたはるかが一人前の備前焼職人になる成長物語です。
芸術文化の魅力を前面に押し出して描かれており、非常に独特の味わい深さが感じられるでしょう。
本稿でははるかが備前焼に夢中になる理由を考察していきましょう。
また、修の意識と窯の温度の繋がりや「ハルカ」がカタカナになる理由も併せて読み解きます。
小山はるか≒奈緒
本作は陶芸を非常に魅力的に描いた作品ですが、その真の魅力は主人公小山はるかではないでしょうか。
主人公小山はるかの前向きに陶芸を行う姿はどこか演じる奈緒と重なる所があります。
奈緒自身女優業に前のめりな自分と陶芸に前のめりなはるかの心境がリンクしたと公言なさっていました。
また、備前焼を体験する中ではるかと同じようにどんどん上手くなっていったのだそうです。
正に役者と役の一体感こそが何よりも本作を非常に生き生きとした作品にしているのでしょう。
はるかが備前焼に夢中になる理由
本作の魅力は兎に角主人公の小山はるかの前のめりに備前焼を追いかける姿にあります。
それまで夢もないままOLとして過ごしていた彼女はどこか後ろ向きで燻っているようでした。
そんなはるかが備前焼に夢中になっていった理由を考察していきましょう。
出会いは大皿
最初の出会いはデパートで行われた備前焼の展示会で見た若竹修という作家の作った大皿でした。
その皿を見たはるかの表情が一気に明るくなり、まるで一筋の光がそこに差し込んだかのようです。
彼女にとっては初恋に出会った時のような一目惚れの衝撃が体に走ったのではないでしょうか。
カメラがその瞬間の感覚を非常によく捉えており、言葉にならない衝撃とはこのことだと受け手に納得させます。
そのたった一つの作品との出会いが彼女の人生を大きく左右する転機となりました。
備前焼の素朴な土味
2つ目の理由として考えられるのが備前焼の素朴な土味にあるのではないでしょうか。
備前焼の魅力は釉薬を一切使わずに土と炎だけで勝負する自然さにあるといわれています。
しかも料理や飲み物など使う度に器自体もどんどん味わい深く変容していくのだそうです。
このことからはるかはきっと素朴ながらも味わいのあるものが好きなのではないでしょうか。
そしてそれは何よりはるか自身が備前焼のような素朴ながらも味わい深い人柄であることの証左です。
若竹修の作家性
そして3つ目にはるかが惹かれたのは大皿を作った職人・若竹修の作家性でした。