いつみ演じる飯豊まりえに当たり負けしない華に相応しいオーラを放っています。

いつみの物語を変えられるから

3つ目に小百合は実は唯一いつみの支配下の外に居て物語を変えられる人間だからです。

いつみが行おうとしたことは自分を裏切った文学サークルの4人に対する復讐でした。

その4人とは美礼・あかね・ディアナ・志夜であり、その中に小百合は含まれていません。

即ち小百合は物語の「外」に居て自由自在にいつみの物語を変えられる立ち位置にいます。

この劇中劇の構造と物語としての構造が論理的整合性によって上手くリンクしているのです。

いつみの2番手として対等で、物語の支配下に置かれない特別な存在が小百合でした。

だからこそ「いつみの物語」から「小百合の物語」になったことに説得力が生まれるのです。

朗読会を開いた狙い

人質の朗読会 (中公文庫)

いつみの死亡という衝撃的な結末で幕を閉じた本作ですが、そのきっかけは朗読会でした。

「いつみの死」というテーマで小百合がこの朗読会を行わせた狙いは何なのでしょうか?

真相の解明

うみねこのなく頃に Episode1 真相解明読本

まず1つ目に朗読会を開いていつみの投身自殺の真相を解明することにありました。

いつみは聖母マリア女子高等学校の経営者の娘にして、全員から憧れられる華です。

そんな彼女がわざわざ思い詰めた挙句に自殺する理由など余程でない限りありません。

小百合は学園の中で禁忌になっているこの事件の真相を聞き出したかったのでしょう。

そしてそれを朗読会という形にすることで間接的にやる手法が巧みです。

4人の「暗黒」を暴き出す

暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)

2つ目の狙いは小百合が4人の「暗黒」を炙り出しにする為ではないでしょうか。

朗読の内容を聞くと分かりますが、4人にはそれぞれ表の綺麗な顔と別の顔がありました。

その内容は完全な足の引っ張り合いで、如何に自分が素晴らしいかを物語にしたものです。

傍から見るとそれは何とも醜いものですが、大事な人の死を前にすると人間は本性が現われます。

小百合はいつみの冷酷さも自分の冷酷さも知り尽くした、ある意味「暗黒」を極めた人間です。

だからこそ4人の中にある暗黒を暴き出し、精神を揺さぶって追い込もうとしたと見られます。

逆らえないようにする

副委員長には逆らえない! オレ様には敵わない!

3つ目の理由として、4人の精神をパニックにして自分に逆らえないようにする為でしょう。

実は上2つはあくまでも前振りで、最後に小百合はいつみが書いた小説を落ちとして用意したのです。

そして闇鍋には毒殺用のすずらんではなくバラバラに切り刻んだいつみの肉が入っていました。

ここで小百合がサイコパスの一面を最後に出すことで完全に4人の心を支配する魂胆です。

目論見は見事成功しいつみの肉を食べた小百合と4人は奇妙な形でいつみとの一体化を果たしました。

非常に手の込んだやり口ですが、そこまでして漸くいつみのようになれるということでしょう。

互いに貶め合う小説を書いた意図

超天才・陳寿が仕組んだ 「魏志倭人伝」《日本貶め》のからくり 古代日本を中国の属国に仕立て上げた歴史捏造の現場検証

小百合の支配下に置かれた美礼・あかね・ディアナ・志夜は朗読会で自身の小説を発表しました。

その内容はマウンティング合戦という言葉が似合う醜い足の引っ張り合いでしかありません。

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