作中で登場するキラーサボテンは、人々を喰らい町を廃墟へと変貌させます。
生存者は建物に立てこもり、町を捨てて新たな地への移動を決意。逃げ場を失った結果サボテン討伐に乗り出しました。
このようなストーリーの流れは、ホラー映画の中でもとりわけゾンビ映画によくみられる傾向です。
「ウォーキングデッド」のような連続ドラマを始め、「ドーン オブ ザ デッド」に「ゾンビ ランド」。
どれも行き着く先は、荒廃し、生命の失せた街の姿です。
子供向けアニメとして形成されているものの、作品の流れやサボテンに対する行動は全てにおいてゾンビ映画に類似しています。
可愛らしい植物の姿を借りながらも、作中のサボテンはゾンビという認識で見て間違いないのではないでしょうか。
低年齢向けアニメとしては長めの上映時間
ドラえもんやクレヨンしんちゃんは幼稚園から小学校低学年をターゲットにしたアニメ作品です。
キッズ向け映画の場合上映時間は90分前後のものが多く、ショートストーリーと2本まとめて公開しているものもあるほど。
長時間集中力が続かない子どもを意識して作られているものが大半です。
しかし、本作の上映時間104分とシリーズ作の中でも3番目の長さを記録。
所々笑いを入れつつ驚きを連続させるパニック映画の作風で、誰もが最後まで熱中してしまう作品に仕上がっていました。
パニック映画要素を上手く取り入れることで、ホラーのスパイスは多くの人に愛されるキッズ映画へと変化を遂げたのです。
ホラー映画へのオマージュ
ゾンビ映画・パニック映画をベースにしている本作では、他の映画などのオマージュも見られます。
パニック映画でいうと、触手の生き物が登場する「トレマーズ」などの類似が多いのが特徴。
ホラー映画好ならば「どこかで見たことがある」というシーンのオンパレードになっています。
吉田有希は本作の引っ越しという要素について、「今回は、大きく設定を揺るがすようなことをやりたい」という発想の原点があり、そのうえでどこで何をやるかと考えた結果、「パニックものはやってないなぁ…ということでメキシコに引っ越してサボテンに襲われるという話になりました」と語っている。
引用:Wikipedia
という製作者サイドの言葉からも、子どもたちが普段は目にしないような映画を作ろうという気持ちが強く伝わってきます。
いたるところにちりばめられたオマージュは、多くのパニック映画を研究した末に生まれたのかもしれません。
大人でも楽しめるキッズ向けホラー映画
「映画クレヨンしんちゃん おらの引っ越し物語~サボテン大襲撃~」は、驚きの連続で観るものすべてを引き込む作品でした。
キラーサボテンが姿と行動で子供たちに恐怖を与える反面、生存者たちの勇気と家族愛が心を奮い立たせる感動を。
しんのすけがヒーローとなった瞬間は、「やった!」と思わせる確かな満足感と達成感を与えてくれました。
子供向け作品として刺激的ではあったものの、さまざまな作品のオマージュを取り入れたことでキッズアニメの可能性を拡大。