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映画『ハイ・ライフ』は日本だと2019年に公開されたSFスリラー映画作品です。
監督はクレール・ドゥニ、主演にロバート・パティンソンとジュリエット・ビノシュを配しています。
近未来の宇宙を舞台に宇宙船での死刑囚・終身刑を受けた人たちの物語は見応え抜群です。
ディブス医師の非情な判断に基づき展開される実験の目的は誰もが予想だにしえないものでした。
本稿ではモンテとウィローが貫いた意思をネタバレ込みで考察していきましょう。
またモンテが関係を知ってもタブーを犯す理由や本作の人間の倫理観を深掘りしていきます。
SF映画のアンソロジー
本作で用いられている要素はいずれも過去のスペースオペラ映画で提示されたものばかりです。
『2001年宇宙の旅』をはじめ、レトロフューチャーSFの要素がアンソロジーとして詰め込まれています。
その目的は1人の男・モンテが宇宙船という特殊な環境下でどんどん狂う様を描くためです。
クレール・ドゥニ監督は本作を「ファム・ファタール(運命の女)の映画」だと語っていました。
即ち1人の男がどんどん魔性の女性に狂わされて常軌を逸していくようになるのです。
その常軌を逸していく男と女の物語が果たしてどこに行き着くのかに着目して核心に迫っていきます。
モンテとウィローが貫いた意思
本作の終盤ではモンテと彼の娘・ウィローのみが残り、ブラックホールに入ります。
そこで2人は黄金の光を見て、何かを決意したかのようにモンテはウィローの手を握るのです。
ここに象徴されている2人の意思は果たして何なのでしょうか?
生きる
まずモンテとウィローが貫いた意思とは何が何でも「生きる」ことではないでしょうか。
とてもシンプルなことのようでいて、実はこれがとてつもなく難しいことなのです。
だって船内にはかつていたボイジーら8人の囚人と医師の姿はなく、自分たちしかいません。
ブラックホールを抜けた先に何が待ち構えているのか分かりませんし、生きている保証もないのですから。
それでも2人は何が何でも前を向いて生き延びなければなりません。
まずはその「生」への執着が強くあったということが一連の流れから推測されます。
生命の誕生
2つ目に2人が生き延びてブラックホールを抜ける様は「生命の誕生」のメタファーです。
本作は性的な話題がかなり直喩として用いられており、宇宙空間が子宮内を意味します。
そしてブラックホールの先に待ち受けていた光は正にその胎内から赤ん坊が生まれる瞬間でしょう。
つまり2人はそれまでの宇宙空間=胎内から潜り抜け新しい世界へと生まれ出てきたのです。
2人にとっての「生きる」とは非常に神秘的な弾ける命として生き直すことではないでしょうか。
近親相姦
3つ目に本作がテーマとする「タブー」と結びつけると近親相姦の関係が浮かんできます。