出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B005JR8M5Y/?tag=cinema-notes-22
映画『つぐみ』は吉本ばななの原作小説『TUGUMI』を1990年に実写映画化した作品です。
監督は市川準、主演のつぐみを牧瀬里穂が、まりあを中嶋朋子が演じています。
生まれつき体が弱いながらわがままな少女つぐみに起きたある夏の出来事がメインです。
西伊豆で出会った青年・恭一との甘酸っぱい恋模様は多くの人たちの共感を呼びました。
特に牧瀬里穂の演技力は抜群で、例えば以下を受賞しています。
第15回報知映画賞監督賞
第64回キネマ旬報ベストテン新人女優賞
第14回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、新人俳優賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/TUGUMI
本稿では恭一が見舞いに来た時につぐみが隠れた理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、彼女が恭一に惹かれた理由やラストの手紙に書かれたつぐみの想いも併せて読み解きます。
つぐみを俯瞰する物語
本作全体を見据えると1つ面白い特徴があって、それはつぐみを俯瞰する物語であるという点です。
確かにつぐみは本作の主人公なのですが、物語の語り手(狂言回し)はあくまでもまりあになります。
そう、本作はあくまでもつぐみの物語をまりあ視点で解釈した物語に過ぎません。
何故こんな語り方をするのかというと、つぐみ自身の視点で書くと余りにも痛々しいからでしょう。
つぐみは病弱故に周囲を散々引っかき回すいたずらっ子で、お世辞にも「いい子」ではありません。
そんな彼女がただ周囲に迷惑かけて恭一を好きになり、終盤では命がけの復讐までするのです。
こんな人物をストレートに描いたら、視聴者の反感を買ってしまうのではないでしょうか。
それをまりあ視点で俯瞰し過去の事象として切り離すことで美化された物語になるのです。
このことを前提に置いた上で、まりあ視点で語られるつぐみの物語を読み解いていきましょう。
恭一が見舞いに来た時に隠れた理由
本作の中で1番の見所として押し出されているのはつぐみと恭一の淡い初恋です。
その中から特に気になるのが恭一が見舞いに来た際に何故つぐみは隠れたのでしょうか?
あらすじを整理しながらその理由を考察していきます。
弱い自分を見られたくない
1つ目につぐみは弱い自分を見られたくなかったのではないでしょうか。
彼女の強気ないたずらっ子としての振る舞いは病弱な自分を隠すポーカーフェイスでした。
もし恭一がそんな自分の弱さを見てしまったら幻滅してしまうかもしれません。
かといってつぐみにはそれを強気にはね除けるだけの振る舞いが出来なかったのでしょう。
だからこそそんな自分の弱さを見られたくないと隠れたのだと推測されます。
まりあたちを困らせるため
2つ目につぐみはいつもの天邪鬼を発揮してまりあたちにいたずらをしかけたのです。
これは恭一が来たこととは別の理由から生じた彼女なりの理由付けではないでしょうか。
つぐみは元来こういう性格だったのではなく、根っこは真っ直ぐで優しい子でした。
病弱な体質と周囲の甘やかしが彼女の中で綯い交ぜになって開き直りを起こさせたのです。