だからこそ彼は序盤のシーンでニックを「お互いがお互いを必要としている」と説得しました。
しかし、この理屈自体が実は破綻していることにコニーは気付いていません。
弟はお金持ちになって楽したいと思っていた節はなく、兄の勝手な思い込みです。
そうした両者の思惑違いが銀行強盗の失敗を生んだのだといえます。
自己弁護
その勝手な思い込みが今度は自己弁護となって、弟以外の人にまで迷惑をかけることになります。
恋人のコーレイに借金して弟を釈放しようとしたり、病院から連れ出した男はレイという赤の他人だったり。
挙句の果てに行きずりで出会った少女・クリスタルと口づけを交わして肉体関係にまで及ぼうとするのです。
それ位コニーは様々な人たちを自身の犯罪行為に巻き込み、その人たちに迷惑をかけっぱなしでした。
後半ではもはや弟ニックの為は単なる自己弁護でしかなくなり、自分の都合しか考えていないのです。
病院から連れ出したのが弟ではなく犯罪者だったのも犯罪者同士で引き合った結果ではないでしょうか。
ミイラ取りがミイラになる
弟への思いやりから始まったコニーの行動はレイの死と共に逮捕される形で幕を閉じました。
因果応報ではありますが、これは即ちミイラ取りがミイラになるということではないでしょうか。
弟を楽させ自分も楽するために始めた犯罪が後半では手段と目的が逆転して犯罪自体が目的化しました。
しかも切ないことにそれが前述した弟・ニックとの深い亀裂を生み出す結果となってしまったのです。
恐らく兄が刑期を終えて釈放されたとしてもこの兄弟が一緒に居られる日は永遠に来ないでしょう。
負けに不思議の負けなし
こうして考察を重ねていくと、コニーの行動には「負けに不思議の負けなし」という法則が見えます。
彼の弟を巻き込んだ犯罪行為が上手く行かなかったのは根本の部分のズレと準備不足にありました。
そして何よりも目立つのはその場しのぎの思いつきで次々と行動してしまう身勝手さです。
その身勝手さが弟に濡れ衣を着せられたと思わせ、また数々の人に迷惑をかけることになりました。
コニーはニックを連れ出した時点で既に負けるべくして負けていたのかも知れません。
彼の存在は反面教師として「こうなってはいけない」を教えてくれる格好の材料ではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本作を冷静に俯瞰してみると、コニーは実に隙だらけの間抜けな犯罪者といえるでしょう。
気持ちだけで突っ走った結果やることなすこと全て裏目に出てしまうのですから。
しかし、そんな演出を極めてシリアスかつスマートに見せてしまう監督の手腕が絶妙です。
そしてまた、コニーのような若者を見事に演じきったパティンソンの演技力も見事でしょう。
彼の迫真の演技があればこそ、本作が実にメリハリの効いた作風になったといえます。