テロリスト達は仮面をつけ武装して無益な人たちへ襲撃をかけることで弱さを覆い隠しているに過ぎません。
だからこそラストは真に肉体も精神も強いインド軍達に首謀者を除いて負けることになりました。
正に『激走戦隊カーレンジャー』が提示したような、力なき一般市民でもヒーローになれるという図式です。
だからこそ彼らはホテル・ムンバイの戦士として歴史の一部に名を残すことになったのでしょう。
ザーラの別れと再会が与えた影響
本作の山場の盛り上げに貢献してくれたのが人質として捉えられたザーラです。
彼女は夫デヴィッドを失い、しかし最後には何とかサリーとの再会を果たしました。
この夫との別れと娘との再会が与えた影響とは一体何だったのでしょうか?
深い絶望
まずは夫デヴィットとの死別はザーラに深い絶望を与えています。
人質にされた時点で絶望的なのに、夫を無残に殺されたという現実が容赦なく襲ってくるのですから。
最悪の場合それがPTSDなどのような後遺症となってもおかしくありません。
しかし、ここで大事なことはその絶望がただの絶望で終わっていないということです。
次は自分が死ぬかも知れない状況に追い込まれたことが次のステップに繋がります。
災い転じて福となす
この後ザーラは死の淵に追い込まれた状況で凄まじい起死回生を思いつきます。
それがコーランを涙ながらにテロリスト達の前で唱えるというものでした。
イスラム教徒であるテロリスト達にとってはザーラこそ予期せぬ伏兵だったのです。
正に災い転じて福となす、ザーラはアルジュンとはまた違う方向のトリックスターでした。
深い絶望が彼女に与えた最大の切り札であったのかもしれません。
最後に訪れた希望
そしてザーラはその後無事にサリーとの再会を果たす形で生きる希望を手にします。
決して絶望だけではなく、そこからの逆転劇の末に訪れた希望と祝福のカタルシスがあったのです。
この別れと再会はザーラを一躍トリックスターへと輝かせ、強く優しい母へと成長させたことでしょう。
それはラストシーンでサリーと再会した時の彼女の顔・表情が物語っています。
あれは生と死の境目で厳しい試練を乗り越えた強者だけが纏えるものではないでしょうか。
料理長の決意
アルジュンとザーラ、2人のトリックスターの影でもう1人影の実力者として暗躍した者が居ます。
それがオベロイ料理長であり、彼もまたこの同時多発テロ事件における立役者です。
彼はある作戦を決意しアルジュンたちや宿泊客に働きかけることを決意します。
果たしてその決意にはどのような意味があったのかを考察していきましょう。
逃げることも勇気ある選択
料理長は残った宿泊客や家族がある者たちに対して逃げることを推奨します。
ここが素晴らしい選択で、彼は決して一蓮托生だからと残ることを強要しませんでした。
彼の上司としての器と同時に決断力もまた光ったのではないでしょうか。