最初の変化はやはりラストシーンまで相棒となる男子高校生・国崎春馬との出会いではないでしょうか。
警察になることを諦めた筈の彼女が事件を追うようになったきっかけは春馬に出会ったからです。
春馬はやや冷たいスケボー乗りであるものの、車のナンバーなど事件のヒントを詳細に覚えていました。
いつのまにかその関係性は木村と吉野のように信頼出来るバディへと変化していたのです。
彼との出会いがなければなつめは警察官としての輝きを取り戻せなかったかもしれません。
聡明さの覚醒
2つ目の変化はやはり持って生まれた判断力や決断力・勘の良さといった聡明さの覚醒ではないでしょうか。
何が恐ろしいといって成績優秀なだけではなく頭の回転や土壇場の戦術といった意味でのIQも高いことです。
それでいて、行動力も非常に高く、正に女性版の名探偵コナンといっても差し支えないレベルでしょう。
目が見えないからと道を閉ざしていた彼女は事件にスイッチが入ると一気にその思考の枠が外れるのです。
それこそ警察官でなければ探偵という道もあるのではないでしょうか。
春馬に夢を持たせる
そして3つ目にそんななつめの勇敢な姿が春馬に警察官になる決意を促したのです。
これだけ人が死ぬ様を見て、危険も十分味わったのに春馬は尚警察官を志します。
普通に考えれば誰だってこの時点で警察官を目指そうなどとは思わないでしょう。
そこを警察官を目指す方向へ向かわせたのはなつめの格好良さと正義感の強さからです。
なつめ自身に自覚はなくとも、彼女の雄姿は間違いなく他者を勇気づけています。
世間に知られていない若者の闇
さて、本作が韓国版・中国版との差別化を図った点は若者の闇に焦点を当てたことです。
直接のテーマではないものの、女子高生を風俗の勧誘から救う様子は本作ならではのものでしょう。
背景にあるのは女子高生が親の知らない所でアンダーグラウンドなことをしかねない現状です。
本作で狙われたのは正にそういう家庭事情が上手く行かない女子高生達でした。
世の中は弱肉強食ですが、本作が示したのは表面上分からないよう巧妙に仕組まれた詐欺です。
正に「見えない」というタイトルに忠実な悪の姿ではないでしょうか。
まとめ
本作は様々な意味で「見えない」作品でありました。
展開が見えないことや悪の正体が見えないこと、主人公の目が見えないこと…。
これらは全て現代日本社会が「見えない」社会であることを表わしているのです。
ましてや価値観や社会構造がめまぐるしく変化している昨今では尚更のことでしょう。
そんな中でもなつめのように五感を研ぎ澄ませ、暗闇から真実を嗅ぎ取ろうとする姿は大切です。
正にこれからの闇多き時代を生き抜くことになる人たちへ向けた作品ではないでしょうか。