出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07MNPB5D6/cinema-notes-22
2018年に公開された映画「若おかみは小学生!」。
事故で突然両親を失った小学生の女の子が、祖母が切り盛りする旅館で若おかみとして働きながら成長する姿を描いた作品です。
公開当初こそあまり客足が伸びなかった作品ですが、SNSで話題を呼ぶと様々な方面から絶賛の声が寄せられました。
監督は「天空の城ラピュタ」をはじめ、ジブリ作品で原画や作画監督を担当した高坂希太郎。
脚本は「おじゃる丸」や「映画 聲の形」で子ども向けから大人向けまで幅広い作風を持つ吉田玲子。
人気子役・小林星蘭が主人公の関織子(通称・おっこ)を熱演。子役から声優へと演技力の広がりを証明しました。
アニメーションで描かれる美しい温泉街の風景や繊細に描かれる人物の感情。旅館の従業員の所作や祭りの神楽の動きの繊細さ。
可愛らしいキャラクターデザインとシリアスなテーマ、それに混ざるファンタジー要素。様々な魅力が結合した老若男女誰もが楽しめる作品です。
終盤、おっこにとって重大な関係のある木瀬が宿泊します。おっこはなぜ木瀬に「旅館にお戻りください」と言ったのか。
小さなおっこがどう両親の死を乗り越えたのかと合わせて考察します。
おっこのトラウマ
突然事故で両親を亡くしたおっこ。その出来事はおっこの心に深いトラウマを残していました。
両親の夢の意味
祖母の旅館で働くようになってから、おっこは時々両親の夢を見ていました。
その内容は生前の家族の想い出というより、現在進行形の家族の日常に近い物です。
この夢はおっこが両親の死を表面では受け入れながらも、心の底ではそれを否定していることを意味しています。
気づいたら手元にあったプリンが食べられていて、その直後に挿入される父がプリンを食べたるように口を動かす場面。
両親は死んでいますが、この場面はおっこが「ぷりんを食べたのが両親かも」という妄想を持っていることを意味しています。
不安定な精神
親しくなった泊まり客のグローリー・水領と買い物に出かけるおっこ。
水領が運転する車が途中でトラックとすれ違いトラウマが甦り、これにより両親が既に死んでいることを改めて突き付けられるおっこ。
しかし、それでも両親が生きている気がするというおっこの様子は、彼女の精神が不安定な状況であることの示唆。
おっこが夢だけでなく、言葉という明確な形で不安定さを吐露した重要な場面です。
おっこが出会った客の意味
旅館で働くことになったおこっこは様々な客と出会います。それらの客は意味を持っておっこの前に現れました。
最初に現れた親子。息子のあかねは母を亡くしおっこと似た境遇でした。
悲しみに打ちのめされ、ひねくれてばかりいるあかねの姿は旅館に来なければこうなっていたかもしれないおっこの姿。
二人目の客である水領は恋人と別れて信じていた未来を失っていました。
それも、当たり前に家族の未来を信じていたおっこの姿と重なります。