ここで疎遠となった家族の絆が2人の擬似的な親子関係を用いて示されています。
このシーンがあったからこそ悠木は海外の息子に会いに行く決意を固めたのでしょう。
大事なものを思い出す
そして3つ目にこのラストシーンは悠木が本当に大切なものを思い出すためにあります。
彼は取材中乗客者のリストの中に自分の息子と同い年の息子を見つけて涙を流すのです。
ここから本当は凄く家族思いで優しく温かい父の顔があることを匂わせています。
新聞記者として働くために気がつけば家族という大切な物を犠牲にしていた悠木。
そんな彼が改めて自分の心と向き合い、大切な物を思い出したのではないでしょうか。
それこそが疎遠になっていた息子や家族との絆であったのです。
辞職した理由
事故を巡って様々な葛藤・決断を繰り返した後、悠木はとうとう北関東新聞社と袂を分かちます。
そこに至るには様々な紆余曲折がありましたが、果たして何故このような選択をしたのでしょうか?
彼が辞職に至った理由を読み解きます。
会社の方針への疑問
1番にあったのは真実の追究を行わずして特ダネばかり早めに出そうとする会社の方針への疑問でした。
世間の注目や数字を集める為なら虚偽の報道も厭わない会社のやり口が卑劣に映ったのでしょう。
悠木の根底にあったのは真実をきちんと慎重に確認してから記事を出すべきだという信条です。
その信条に反することを平然と行う彼らのやり口に辟易していたのではないでしょうか。
仕事は決して理想の場所ではありませんが、根底の部分で会社の理念への共感は必要です。
その理念に共感出来なくなったからこそ悠木は辞職の決意を固めたことが窺えます。
内部の利権争いへの嫌悪
2つ目に自衛隊ネタ絡みなどで無用な利権争いを起こす会社のやり口への嫌悪がありました。
佐山の現場雑感を1面にする筈が2面扱いとなり、更に総理の公式参拝でどっちがトップか聞かれます。
どっちでもいいですよ
引用:クライマーズ・ハイ/配給会社:東映・ギャガ
この台詞から悠木が如何に取るに足らない無用な利権争いに辟易していたかが伝わるでしょう。
前述したように悠木が新聞記者として何よりも大切にしていたのは真実の追究です。
それをこのような利権争いや総理のご機嫌取りのような大人のエゴによって不意にされました。
このような理不尽を沢山経験したこともまた辞職を後押しする結果となったのではないでしょうか。
目先のことしか見えていない
上2つをまとめると、要するに会社は目先のことしか見えていないことになります。
何においても、会社の上層部は如何に自分達が得するかしか考えていないのです。
特ダネを常に求めていましたが、その実態は”得ダネ“ではないでしょうか。
自分達がそれを売ることで儲かり得するネタ…それが真実か虚偽かはどうでもいいのです。
視野が狭く考えも浅い仕事しか出来ない会社への絶望が積もり積もって爆発したのでしょう。
これでは悠木に限らず誰であったとしても辞めたくなるのも自然な話ではないでしょうか。
スクープに待ったをかけた意味
最後は辞職を選んだ悠木ですが、その決定打が大スクープに「待った」をかけたことでした。