ウジンは見事に自分の体の苦しみを逆手に取ったビジネスを確立したのです。
そしてウジンも世間の目などではなく自分の本心を大事にするようになりました。
まずチェコで家具ビジネスの足固めをしていくのではないでしょうか。
サンベクとの三位一体ビジネス
2つ目にサンベクと三位一体で家具ビジネスをより充実させていくでしょう。
深くまで葛藤・苦悩したウジンを無言で理解し受け入れてくれたサンベクは2人の支えとなります。
しかも彼は持ち前の明るさを活かして家具販売・宣伝カーの役割を見事果たしているのです。
場所は離れていてもウジンとイスにはサンベクという最強の助っ人が居てくれます。
これがあったからこそウジンは自殺をせずに生き延びてこられたのではないでしょうか。
世間からの隔絶
3つ目に2人は世間から隔絶して生きることを選ぶのではないでしょうか。
確かにウジンの苦しみをイスは受け入れ乗り越えましたが、それで全てが解決する訳ではないでしょう。
世間から見れば毎日違う人間に変わるウジンなど奇異な存在にしか見えない筈です。
日によっては性別すらも変わってしまう彼は世間から見れば少数派に間違いありません。
社会が形成する価値観から外れた人は世間から隔絶して生きることを余儀なくされます。
天才肌のデザイナーですし、芸術家のような生き方が2人の肌に合っているのではないでしょうか。
他人の顔色を窺う現代人
考察を重ねていくと、毎日顔と体が変わるウジンの姿は他人の顔色を窺う現代人のカリカチュアだと分かります。
社交的な場・職場・プライベートと人はそれぞれに違う自分を演じ他人の顔色を気にして生きているのです。
そしてそれがまたウジンのみならずイスの心をも追い詰める元凶になっていたのではないでしょうか。
その意味で本作は「人は見た目より中身が大事」などというありがちなレトリックを用いていません。
寧ろ潜在意識の具現化が見た目となって出るからこそ、人は見た目で大体を判断するように出来ているのです。
ウジンとイスが向き合ってきたのは世間の目及びつい偽ってしまう自分の本心ではないでしょうか。
そこと向き合ったときに初めて2人は自分の望むものが見えて結ばれるに至ったのです。
見た目があってこその中身
いかがでしたでしょうか?
前述したように、本作は決して「人は見た目より中身が大事」と主張する映画ではありません。
寧ろそういう主張こそが綺麗事であるとはっきり現実を見せて否定しているのです。
所詮人は第1印象が全てであり、そこが出来て初めて中身が入ってくるのではないでしょうか。
見た目を気にするのは周囲への気遣い・配慮が分かっていることの現われでもあります。
そうした紆余曲折を乗り越えるからこそ「見た目ではなく中身」に説得力が出るのです。
自助努力なくして醜男が美人と結ばれるという絵空事は決してありませんし逆も然りでしょう。
だからこそロマンティックさとシビアさのバランスに長けた傑作たり得たのです。