ヒーローのサクセスストーリーとド派手なアクションの中に、ギャグ要素を散りばめた作風が持ち味です。
本作でマイケル・ベイと製作総指揮を務めるスティーヴン・スピルバーグは製作サイドで続投しているとはいえ、人気シリースの監督交代は大きな決断だといえるでしょう。
新たに就任したトラヴィス・ナイト監督はアニメーターとしてキャリアをスタートさせ、2016年にはストップモーション・アニメ「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」で初めて映画監督を務めました。
このとき彼は、第89回アカデミー賞で、長編アニメ映画賞にノミネートされています。
日本映画や宮崎アニメの影響を受けている
トラヴィス・ナイト監督は幼少期に父親の仕事で来日した経験から、日本の文化に興味を持ちました。日本映画の巨匠・黒澤明や宮崎駿のアニメ作品から影響を受けていると公言しています。
『バンブルビー』の中にも宮崎アニメの影響が垣間見えました。
バンブルビーがピンチに追いやられ、怒りのあまり暴走モードになってしまうシーン。
宮崎アニメの「あの」ロボットを想起させます。ナイト監督本人も、下記のようにコメントしています。
宮崎駿監督はもはや自分の一部だし、本作ではそんなつもりがなかったのに彼の作品に似ているところがたくさんあると言われたんだ。
出典元:https://bumblebeemovie.jp/news/2019/03/21/fight-back-bee/
本作でナイト監督は、ロボットアクションと並行してヒューマンドラマを描いています。
子供向けと捉えられがちなアニメに心情描写を盛り込むのは日本のアニメの特徴であり、彼が影響を受ける宮崎作品の真骨頂でもあります。
トラヴィス・ナイト監督への交代は、『バンブルビー』のストーリーがドラマティックなものへ変化した大きな要素の一つだといえます。
過去作にはないバンブルビーの「人間味」が魅力的
おちゃめで優しく、時々ドジなキャラクターとして描かれてきたバンブルビーですが、本作ではさらに彼の性格を深掘りしており、彼の新たな側面を見つけることができました。
バンブルビーは声を失ってしまいますが、彼の表情や行動の一つひとつが彼の優しさや人情味(ロボットですが)を醸し出しています。
バンブルビーの表情が豊かに
監督の希望によって手が加えられたのは、トランスフォーマーの「デザイン」だけではありません。過去作ではあくまでロボットとして描かれていた彼らに表情を与えたのです。
本作では黄色いビートルをスキャンしているバンブルビー。その表情や仕草、行動が緻密に描写されており、声が失われていても彼の感情を理解することができます。
ときには怯えたり怒りに震えたり、安心したり信頼したりと様々な感情を表現するバンブルビーはどこか人間らしく、見た目はロボットだとしても思わず感情移入してしまいます。
アクションシーンに込めた感動要素
トランスフォーマーシリーズの大きな魅力であるアクションシーンは『バンブルビー』でも健在です。
ただし、トランスフォーマーたちの武器の強さや攻撃の素早さ、激しい衝突を見せつけるような描写ではありません。
誰のために、どんな理由があって戦うのか。バトルが内包するキャラクターの心情にフォーカスしたシーンとして描かれました。
ナイト監督は、アクションシーンの描き方について、次のようにコメントしています。
この作品にもアクションシーンを入れること自体は、当初から間違いなかったが、チャーリーとバンブルビーの関係性という大切な要素と関わっていることが重要だった。だから、感動をひっくり返してしまうようなトランスフォーマー同士の戦いによる騒乱や高速でのカーチェイスは無意味だと思ったんだ
出典元:https://bumblebeemovie.jp/intro.html
この作品はあくまでも主人公チャーリーとバンブルビーの二人の数奇な運命や友情、信頼を主軸としており、チャーリーの存在がバンブルビーの戦いにどのような影響を及ぼしているのかといった点が大きな見どころなのです。
戦っているバンブルビーがチャーリーを守ろうとする姿に、彼の強さや優しい性格が表れています。
18歳の女の子とバンブルビーの感情描写が見事
本作はトランスフォーマーであるバンブルビーがメインキャラクターですが、チャーリーという女の子を主人公とする物語でもあります。