【三度目の殺人（ネタバレ）】謎のラストが私たちに問いかけるものとは？現代の司法制度についてこの作品を通して考える！

この殺人に関しての真実としては、『死刑』を覚悟で咲江の為に自分の勤めていた工場の社長を殺害し、強盗殺人として見立てる為に、殺害後ガソリンをかけてから財布を取っています。

死刑を覚悟していることが、家賃を早めに振り込んだり、飼っていたカナリアを5匹とも殺してしまったりと身辺整理も行っていたことからも伺えます。

これは二度も殺人を犯した三隅へ、三隅本人と重盛の二人が司法制度を通して『死刑』という形で殺すことを指しています。

娘のように思っていた咲江が辛い証言をしなくて済むように、減刑という道ではなく、遅すぎる『無罪』を主張し『死刑』という道を選ぶことで咲江の将来を守りました。

「みんな同じ司法の船に乗っている」という摂津の発言を考察

司法とは、具体的な訴訟について法を適用し宣言することにより、これを裁定する国家作用のことを指します。

簡単に言えば、法律を破った人に対して、適切な裁きを下すことが司法制度の行うことを表しています。

そして、司法は裁判官・検察官・弁護士の法曹三者によって遂行されます。

作中でも何度か法曹三者で話し合い、どう進めて行くかのシーンがあったように、法廷で真実を追求することはあまりなく、いかに円滑に進めるかが求められるようです。

司法制度は、国や時代ごとに異なっており、今現在も司法制度改革については常に話題となっています。

本来であれば、事件の真実が様々な証言を元に明らかにされるはずの法廷ですが、司法関係者は誰一人として事実に対する追求は行いません。

作中でも「戦術的に不利になる」という発言があったように、事実はどうでもよく、この裁判で勝つことができるのかという点にだけ注力していることが見て取れます。

結局、真実という点に目を向けることはなく、法曹三者はいかに多くの裁判をスムーズにこなすことができるかに注力しているということがわかります。

「司法の船に乗っている」という点では、それぞれの業務を遂行していく上で現代の司法制度の闇を映しているともいえます。

一度目の殺人のことを話す刑事が、当時の三隅を表す際に「空っぽの器のようだった」という言葉を残しています。

怨恨で殺害したという話だったものの、三隅から憎しみの感情を感じることもなく、当時も供述がコロコロと変わっていることから、何を考えているかもわからない空っぽの器のようだと比喩されています。

供述が変わっていく点や、何を考えているかわからないという点でも二度目の殺人に通ずる点がありました。