わざわざウィリアム自ら働かなくても全部面倒くさい仕事をAIがやってくれるのです。
そのお陰で彼は大事な時間を家族との平和で安心した暮らしに費やすことが出来ます。
逆にいうと将来人間社会はAIによる仕事の自動化が進むことがここで予言されているのです。
ゾーイを選んだ理由
物語中盤、ウィリアムは家族4人の内3人しか選べないとエドに告げられました。
即ち1人を犠牲にしなければならず、苦渋の決断の末ゾーイの完全抹消を選んだのです。
では何故末っ子のゾーイでなければならなかったのか、理由を考えていきましょう。
トレードオフ
まずここで描かれているのはトレードオフ、即ち何かを犠牲にして何かを得る考え方です。
今回の場合は末娘ゾーイの犠牲と引き換えに残りの3人を生き返らせることがそれに相当します。
ただでさえ交通事故で死んだ家族をクローン技術で蘇らせるというリスキーなことをしているのです。
本来なら1人だけ蘇るなどでもおかしくないのにそれを3人も蘇生させることが出来るのですから。
全員が全員蘇ったとあってはそれこそご都合主義だと罵られてもおかしくありません。
何か新しいことを得ようとする時には痛みや犠牲が必ずその裏に伴うものです。
他人の気持ちに疎いから
2つ目にウィリアムが余りにも天才過ぎて他人の気持ちに疎いからではないでしょうか。
クローン技術を応用して次々と人に出来ないことを成し遂げる天才ウィリアムに天は二物を与ませんでした。
一見悩んでいる振りをしながらその実合理的にどう家族が蘇るかを考えて動いているのです。
3人の内誰を蘇らせるかで最初に妻を選んでいる辺りも実はかなり人を差別しています。
そうした他人の気持ちに疎いからこそ合理主義的に家族の中で誰を切り捨てるかを考えたのでしょう。
余りにもそつなくこなしすぎる天才ぶりが末娘こそ不要だと判断させたと思われます。
記憶の完全抹消
もっと恐ろしいのは消去法による選択をした後にゾーイの記憶の完全抹消を成功させたことです。
不要と分かったら何も要らないといわんばかりに家族の記憶からゾーイを切り捨てようとします。
違和感に気付いた妻モナのクローンに見抜かれますが、そうでなければゾーイは永遠に忘れられていたでしょう。
ここで示されているのはウィリアムの天才科学者としての合理主義者ぶりに他なりません。
善意からではなくあくまで合法的に家族と居られるようにする発想が完全に振り切れています。
きっとモナたちはウィリアムの天才ぶりに散々振り回されてきたのではないでしょうか。
ジョーンズのクローンと仕事する理由
そしてラスト、何とウィリアムクローンは何故か敵だった筈のジョーンズのクローンと仕事しています。
自分の命を狙っていた者、しかも自分の親友を殺した者と何故仕事をするのでしょうか?
ここではその理由について読み解きます。
戦力計算
まず第1に挙げられるのは戦力計算として頼りになると思ったからではないでしょうか。
クローン技術の研究に目をつけて利用しようとするのはスペックが高い証拠です。