ハルと一馬は柔道を諦めましたし、翔は経験者としてさくらの怪我というトラウマがあります。
また、トンは運動が苦手ですし、溝口も偉人の言葉を借りてしか自分を表現出来ません。
イチローとゲンも仲の良い親友ではあれど、いざという時に本音をぶつけ合えないのです。
そう、7人全員が正々堂々とした立ち居振る舞いで自分を表現することを苦手としています。
そういうコンプレックスを抱えているからこそ、団結して頑張れたのではないでしょうか。
痛みが分かる優しい人
2つ目にコンプレックスを抱えていることは即ち痛みが分かる優しい人に繋がります。
特にハルと一馬は柔道の道を断念したからこそ、何かを諦める辛さを知っているのです。
そのことは特に一馬が全員に発破をかける次の言葉で代弁されています。
俺はぶっ壊したい。皆が隠してる本音とか不安とか、頑なな心をぶっ壊したい
引用:チア男子!!/配給会社:バンダイナムコアーツ、ポニーキャニオン
彼は何よりも部員全員が弱みや不安、何よりも差別や偏見と闘っていることを知っていました。
そんな痛みが分かる彼らだからこそチア部を結成し、頑張ろうと決意したのです。
他者を応援する気持ちが生まれるのはその痛みを伴った優しさからではないでしょうか。
根っこが素直
そして3つ目に誰よりも根っこが素直で真面目であるということではないでしょうか。
1度部の仲が険悪な雰囲気になって噛み合わなくなっても、現実を見せつけられても諦めません。
何の為にチア部をやっているのか迷ったことはあっても、チア部を辞めたいという人は居ませんでした。
そう、彼らは常に前向きで真剣に頑張っているからこそ時に傷つき、悩みながら進むのです。
他者を応援するエネルギーとは何よりもその根っこの素直さと真面目さから来るのではないでしょうか。
7人全員が舞台で見せたキラキラ輝いている笑顔が全てを物語っています。
応援とは何か?
本作はチア部の活躍を通して「応援とは何か?」と凄く真摯に向き合って描いています。
応援とは表舞台に立つ人たちへの貢献であり、素直さや優しさを持った人でなければ出来ません。
そしてその素直さ・優しさとは自分と真摯に向き合い、心から応援したいという気持ちから来ます。
スポーツ選手やスーパースターが輝けるのは決して自分1人の力だけではありません。
何よりも見に来てくれる人、応援してくれる人たちがいるからこそ輝けるのです。
表舞台に立つ人たちだけが全てではない、応援もまた立派な縁の下の力持ちではないでしょうか。
常識なんてぶち壊せ
本作は作品全体として非常に爽やかながらも内面は反骨精神に満ち溢れています。
チア部という女子がやると思われていたものから何から、悉く覆していくのです。
そしてその既成の価値観を壊した上で今度は自分たちの価値観を作り上げていく。
正に「常識なんてぶち壊せ」が本作に込められた最大のメッセージでしょう。
例え最初は煙たがられ批判を食らっても、本気の思いがあればいずれ理解されるものです。
現にハルたちはそうやって多くの人たちの見る目を変えさせたのですから。