出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07VB8LMGP/?tag=cinema-notes-22
映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』は2018年公開のレイフ・ファインズ監督による伝記映画です。
主演はオレグ・イヴェンコ、更にアデル・エグザルホプロスやセルゲイ・ポルーニンが脇を固めます。
20世紀最高のバレエダンサーとして名高いルドルフ・ヌレエフの亡命に至るまでの半生が物語の主軸です。
完成度も非常に高く以下の功績を残しました。
Ralph Fiennes received the Special Achievement Award for Outstanding Artistic Contribution at the Tokyo International Film Festival, with the film receiving a Tokyo Grand Prix nomination.
引用:https://en.wikipedia.org/wiki/The_White_Crow
本稿では伝説のダンサーヌレエフの語る「自由」をじっくり深掘りしていきましょう。
また、夫人との関係が与えた影響や亡命の決意の真相にも迫っていきます。
ルドルフ・ヌレエフ、その人となり
“20世紀最高のダンサー“の名を恣にしているルドルフ・ヌレエフはどのような人物だったのでしょうか?
ロシアでタタールの家系に生まれた彼は幼少期にバレエに目覚め、メキメキ頭角を現すようになります。
しかしその後初の海外公演として行ったパリ公演を機に突然の亡命を遂げてしまいました。
フランスの芸術を様々学ぶ一方でKGBという体制側に目をつけられたことが大きく影響してのことでしょう。
その後はシルヴィ・ギエムやマニュエル・ルグリなど有名なダンサーを数多く輩出しています。
また、当時としては口に出すことすら憚られた同性愛者の公言など何かと話題に事欠かない人でした。
人間としてはどこか危うさや欠落がありながらもダンサーとしては間違いなく伝説クラスです。
本作が語るヌレエフの物語が何を伝えてくれるのかを是非見ていきましょう。
ヌレエフの語る「自由」
紆余曲折あって物語の最後に亡命という選択肢を取ったヌレエフ。
「自由になりたい」と語っていましたが、果たして彼の口にする「自由」とは何でしょうか?
物語の流れを踏まえながらじっくり掘り下げていきます。
究極の二者択一
ヌレエフの語る「自由」とは究極の二者択一、即ちバレエダンサーか収容所に入るかのどちらかです。
ロシアに国籍を置くと連行されてしまいますが、バレエダンサーの道を選ぶには国を捨てる他ありません。
つまり彼の欲する自由とは彼の人生そのものであるといっても過言ではないでしょう。
逆にいうとそれ位ヌレエフの人生は波瀾万丈に満ちたものであるということです。
普通の生き方がまず出来ない、正に左右極限の振り子のような生き方であると窺えます。
踊ることは生きること
2つ目ヌレエフににとってはバレエダンサーの道が全てだったのではないでしょうか。
彼にとってはもう踊ることが生きること、そして生きることが踊ることなのです。
だから只管踊り続ける以外ヌレエフの人生は存在しません。
実際史実でも、ワガノワ・キーロフバレエ学院の入試で試験官から指摘されていました。
歴史に残るダンサーになるか、失敗するかのどちらかだと…実に慧眼な試験官であったといえます。
ダンスの上手い下手や好き嫌いの次元ではなくヌレエフの心は100%ダンスが支配しているのです。
5歳の時に見たオペラ
更にそのダンスの大元になったのは5歳の時に家族で見たオペラ、これが全てだったのです。
幼少期の頃に生で見た原体験は何よりも強力な生きる糧となったのではないでしょうか。