音楽や舞台といった芸術は国を超え、人種を越えるエンターテイメントそのものです。
自分の体と音楽1つであらゆることが表現出来る、無限の可能性を秘めたものでした。
だからこそそれを奪おうとする体制側が許せなかったのだと推測されます。
破壊者にして異端児
こう見ていくとヌレエフというダンサーは破壊者にして異端児なのではないでしょうか。
ダンサーになることを夢見てダンスを全て自分のものにして、あらゆるダンスの価値観を塗り替えました。
そんな彼の生き方はとても普通の人に出来るような生き方ではございません。
正に時代が生み出した異端児の中の異端児であり、既存の価値観を壊すダンサーです。
国境を超えて亡命までする位自分と向き合いダンスと向き合って生き続けてきました。
正にダンスに自分を見出し、そして自らに由る生き方で20世紀最高のダンサーとなっています。
夫人との関係が与えた影響
ヌレエフはレッスン中に足を痛め、プーシキン夫人の勧めでプーシキン家で療養しました。
そこで彼は何と夫人の誘惑によって肉体関係を結んでしまいます。
果たしてこの関係が彼に与えた影響とはどのようなものだったのでしょうか?
俗なる部分
まずヌレエフとプーシキン夫人の影響で始めた肉体関係は俗なる部分を明らかにしました。
勿論このような肉体関係を最初から望んでいたわけではないでしょう。
しかし、一方でこれはヌレエフの俗な部分をも示しているわけです。
ヌレエフはダンサーとしては美しくストイックでありながら欲求に素直な人でもありました。
もしこのシーンがなければ彼は単なる格好いいだけのダンサーで終わっていたでしょう。
こういう俗なる部分があってこそよりヌレエフの魅力が増しています。
ダンスの表現に幅が出る
密かに肉体関係を結んだことでダンスの表現に幅が出たのではないでしょうか。
肉体関係もダンスも肝となるのは下半身の筋肉と腰の動かし方です。
ヌレエフは復帰した後実力を伸ばしていきますが、よりダンスにセクシーな魅力が増しています。
歌舞伎界などでも割と早い段階で肉体関係を結ばせることがありますが、正にそれでしょう。
芸術を表現するためには様々な経験が必要であり、肉体関係もその1つです。
全てに影響があったわけではない
しかしながら、2人の関係は決してヌレエフの人生に大きな影響を与えるほどではありませんでした。
レッスンを見に来たセルゲイエフに激怒し、更にプーシキン家に帰ってきても怒りは収まりません。
ヌレエフにとってダンスをする自由を奪われることこそが最も深刻なことだからです。
あくまでも中心はダンス、それがあった上での夫人との肉体関係だったのではないでしょうか。
だからこそ彼はプーシキン家を出て行き、次の自分が向かうべき所へ向かったのです。
亡命の決意の真相
ラスト、遂にヌレエフは亡命を決意し、支度を済ませた後に再び舞台へと向かいました。