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【言の葉の庭】雪野が裸足で走り出した理由を徹底解説!「嫌いでした」という告白がもたらした結末はハッピー?それともバッド?

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00BQA8I66/cinema-notes-22

新海誠監督は『君の名は。』の大ヒットにより日本を代表する有名アニメ監督に仲間入りしました。

『言の葉の庭』は、新海監督が『君の名は。』のひとつ前に制作した作品です。

2013年に公開され、上映時間46分という短い時間で新海ワールドがあますところなく発揮されました。

雪野が裸足で走り出したのは、どんな思いがあったからでしょうか。

そして気になる映画の結末はハッピーエンドといえるものなのか、名作『言の葉の庭』を考察していきましょう。

雪野が裸足で走り出した理由

小説 言の葉の庭 (新海誠ライブラリー)

孝雄を1度突き放したのに、雪野はすぐに彼を追いかけました。

なぜ雪野は走り出したのでしょう。

雪野は自分を押さえていた

雪野はずっと泣けませんでした、武装をしてきたからです。

自分の心をきつく絞めつけるフォーマルな服を着て高いヒール、化粧をして、武装を解こうとしませんでした。

世界に認めてもらい仲間に入れてもらうために、雪野には必要な武装だったのです。

大人として教師として女性として、世界の内側からはみ出してはいけないという気持ちのあらわれでした。

ユキノは裸足で「世界の外」に走り出した

孝雄に好きだと言われ、それを教師としての武装ではねのけたと雪野は気づきました。

武装ばかりに目を向けていたので、今まで自分の心に気づかなかったのです。

雪野はやわらかな心を守るために内側に閉じこもっていました。

しかし孝雄を失いたくないという想いがこみあげて、素足のまま外に走り出さずにはいられなかったのです。

世界の外側に自分から走り出していく……

つまり、大人や教師や常識という枠を超えて素のままの自分で孝雄にぶつかろうとしました。

雪野が走り出したのは、それまでの押さえていた心が一気に解き放たれたからです。

心を解き放つカギとなったのが、劇中で詠まれた万葉集でした。

雪野の想いは歌で伝えていた

言の葉の庭 キャラファインアクリル『藤棚』

劇中にはストーリーの軸となる万葉集が登場してきました。

歌を読み解くことで、雪野と孝雄の気持ちが表面に現れてきます。

出逢った時に雪野が詠んだ歌

鳴る神の、少し響(とよ)みて、さし曇り、雨も降らぬか、君を留めむ

引用:言の葉の庭/配給会社:東宝映像事業部

雪野は孝雄に出会ってすぐこの歌を孝雄に残しています。

雷が少し響いて、曇りそして雨が降ればあなたともう少しいれるかしら……。

この万葉集の歌は問いかけの歌となっています。

雪野は孝雄と出会った時から、何となく彼が気になる存在だったのでしょう。

そして、おそらく孝雄にはすぐ解けないであろう万葉集の歌を残しました。

返しの歌を待っていたはずの雪野

雪野は万葉集の歌を残し去った日以降も、何度か孝雄と会っています。

雪野は限られた空間でどんどん自分の内側に閉じ込められていった女性です。

一方孝雄は自分のいる学校という世界からはやく抜け出して外に出たいと思っています。

きみは違う世界ばっかり見てたのね

引用:言の葉の庭/配給会社:東宝映像事業部

劇中で雪野が孝雄に言うセリフが印象的です。

周囲に巻き込まれ翻弄される雪野からすると、孝雄はとても眩しかったことでしょう。

少しづつ雪野は孝雄に惹かれていきます。

雪野の気持ちに気が付いた孝雄

 言ノ葉+GREEN MIND 2012(初回生産限定盤)(DVD付)

孝雄は雪野に下記の万葉集の歌を返します。

鳴る神の、少し響(とよ)みて、降らずとも、我は留まらむ、妹(いも)し留(とど)めば

引用:言の葉の庭/配給会社:東宝映像事業部

雷が少し響いて、曇りそして雨が降らなくても君が願うなら私はここにいる……。

雪野が詠んだ歌の意味を孝雄が知った時、孝雄は彼女の本心に気が付いたはずです。

だからこそ、自分の気持ちを歌で返したのでしょう。

「嫌い」という言葉が導いたもの

言の葉の庭

階段での瞬間がハッピーエンドとバッドエンドへの分岐でした。

孝雄の「嫌い」という言葉は二人の関係を変化させる鍵といえるでしょう。

雪野にぶつけた思い

あなたの事、嫌いです。

あんたが教師だって知ってたら、靴の事なんか喋らなかった。

引用:言の葉の庭/配給会社:東宝映像事業部

孝雄の言葉には深い意味が隠れています。

教師だって知らなかったというのは、実際の教師としての存在ではありません。

雪野が心に張った「教師と生徒」としてのバリケードのことです。

あんたは最初から分かってたんだ!

あんたは一生ずっとそうやって、大事なことは絶対に言わない

引用:言の葉の庭/配給会社:東宝映像事業部

孝雄は雪野が自分を好きだということを知っていたのでしょう。

好きなのに、気持ちに蓋をして孝雄のことを遠ざけようとする……。

どうして自分を受け入れてくれないのだろうという不満、それを孝雄は雪野にぶつけたのです。

しかしここで「嫌い」という孝雄の不器用な言葉が、雪野の同じような不器用さにまっすぐ届きました。

一見マイナスに見える言葉が、二人をハッピーエンドの可能性へと導いたのです。

もしあそこで今までどおり気持ちを押し隠していたら、つながりは途絶えていたはずです。

しかし、気持ちをぶつけあったことでたとえ離れてもほどけない強い絆を二人は結びました。

二人は子ども時代に別れを告げ、大人の世界へと歩み出していくことができたのでした。

小説に描かれた詳細

言の葉の庭 Memories of Cinema

劇中では描かれていない詳細な描写は、新海監督自身の手によって執筆された『小説 言の葉の庭』に記されていました。

孝雄が「嫌い」と叫んだのは、雪野がそう望むからです。

しかし孝雄の気持ちはどんどん高ぶってしまいました。

感情のすべてが、しだいに怒りに変わっていく。

引用:新海誠『小説 言の葉の庭』(汐文社発行)

雪野のことを諦めなければいけない絶望も相まって気持ちが爆発したのではないでしょうか。

雪野が本心から自分を嫌ってくれたら、諦められると思ったのかもしれません。

孝雄もまだ高校生です、雪野に合わせてどこかで背伸びをしていたのでしょう。

押さえていていた思いが口から溢れてきました。

二人の未来を示唆するもの

言ノ葉

ラストシーンで映された靴は、孝雄がはじめて作った雪野のための靴です。

春を思わせるやわらかな色合いの可愛らしい靴でしたが彼はあの靴を雪野に渡せたのでしょうか。

靴がつなぐ未来

一緒に歩く練習をしていた二人の道はわかれて、別々に遠くへと歩いていきます。

しかしどんなに遠くまで行っても、成長した二人ならまた戻ってこられます。

二人は雨の東屋で言葉にしない約束をしました。

その約束ははっきりと言葉にされませんでしたが、孝雄が雪野の靴を作るという約束です。

遠く離れても二人は靴の約束でつながっているのです。

孝雄はもっと成長して、ちゃんとした靴が作れるようになったら雪野に改めて告白するのかもしれません。

小説での結末

『小説 言の葉の庭』では、二人の行く末が完結しています。

孝雄20歳、雪野32歳の時に新宿御苑の東屋で靴を手渡すのです。

二人がその後結ばれたか否かは書かれておらず、観る者に解釈を任せる形になっています。

気になる方は映画とあわせて『小説 言の葉の庭』を読んでみてはいかがでしょう。

物語にさらに深みがでることでしょう。

結末は『君の名は。』に受け継がれている

言の葉の庭 (アフタヌーンKC)

本作は新海監督の『君の名は。』に繋がっています。

『君の名は。』で登場した古典教師のユキちゃんは本作品の雪野です。

雪野の実家は四国ですが、その後岐阜県の糸守町(架空の地)で古典教師を続けています。

『君の名は。』でも重要な誰そ彼という言葉を使っていました。

孝雄は出てきませんが、『君の名は。』の結末を考察すると雪野は東京へ来て孝雄と一緒に過ごしたのかもしれません。

「生き続けること」がテーマの作品

 劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD

新海監督の作品は命がテーマになることが多いですが、本作品も生きることをテーマにしています。

どんな形であれ、生き続けることで未来は開けてくるのです。

自分の殻を破った雪野、夢の先に雪野を愛した孝雄には幸せになって欲しいものです。