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映画『ビューティフル・ボーイ』は2018年公開の伝記映画で、日本では2019年に公開されました。
監督は『オーバー・ザ・ブルースカイ』で有名なフェリックス・ヴァン・フルーニンゲンです。
主演は『君の名前で僕を呼んで』で有名なティモシー・シャラメ、製作にはあのブラッド・ピットまで携わりました。
薬物依存に陥った優等生ニック・シェフの実話を父デヴィッド・シェフの視点から描いています。
依存症に陥った息子と父親の切ない親子愛の物語は涙なしでは見られない痛さと切なさがあるのです。
2人の演技合戦と人生の再生を賭けた物語は今でも多くの人の感動を呼ぶものとなっています。
本稿では父デヴィットが息子を支え続ける理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
また「美しい少年」は誰のことを指すのかや親子の絆なども併せて掘り下げていきます。
愛ではどうにもならない薬物依存
本作で語られる「薬物依存」というテーマは確実に見る人を選ぶアンダーグラウンドなテーマです。
日本では夜回り先生こと水谷修先生が特にこの問題に携わっていらっしゃったことで有名でしょう。
先生曰く薬物依存は完全治療が難しく、使用者の中で社会復帰が出来たのは僅か3割といわれています。
しかもその3割の人たちも薬物の誘惑と死ぬまで戦い続けなければならない程の危険な代物です。
1度手を染めてしまったが最後、決して元の健全な肉体に戻ることは出来ません。
本作はその現実を承知の上でシェフ親子の愛の物語を紡ぎ出していこうとしています。
果たしてその物語は受け手に何を伝えてくれるのでしょうか?じっくり考察していきましょう。
デヴィットが息子を支え続ける理由
音楽のフリーライターであるデヴィッド・シェフは息子ニックの薬物依存に頭を悩ませ続けます。
施設に入れてもダメで1度は人生をやり直せと勘当紛いに突き放してすらいるのです。
それでも彼が息子を支え続けた理由は一体何なのでしょうか?
獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす
まず息子ニックを敢えて突き放したのは決して嫌いだからではなく愛情故にこそです。
いわゆる「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」であり、1度徹底的に突き放すしかありません。
依存症の息子に手を差し伸べる行為はかえって依存症を深めるだけで、症状を悪化させます。
人間最後に自分を救うのは自分しか居ないとデヴィッドは踏んだのではないでしょうか。
落ちるところまで一旦落ちて貰うことで、逆にニックが自分で這い上がるように仕向けたのです。
だからこそラストでは落ちるところまで落ちたのに再会して社会復帰を目指しました。
不勉強からの後悔
2つ目に父デヴィッドは息子に関しても薬物依存の恐ろしさに関しても不勉強過ぎました。
息子のノートに書き殴られた言葉や絵を見て初めて裏に抱えていた感情を理解するに至ります。
また、薬物依存の恐ろしさも勉強を重ねたことで如何に自分が無知であったかを恥じたのです。
知らないことが如何に恐ろしく如何に人も自分も不幸にするかをこの時デヴィッドは身を以て知りました。
その後悔があればこそ、尚更のこと父として責任を全うしなければと思ったのではないでしょうか。