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ダミアン・ジフロンが監督した、6つの短編ストーリーから構成される人生の「スイッチ」を表現した『人生スイッチ』。
「おかえし」や「おもてなし」「パンク」「愚息」など、それぞれのストーリーで押してはならない(押してよかった)スイッチがありました。
この映画を何の予備知識もなく見た人なら、映画冒頭で飛行機が老夫婦に突っこんだところで「どういうことだ」と疑問を抱くはず。
それから本編が始まるかと思うと、なぜか画面に映ってくるのは野生の動物たち…
一つ一つに隠された人生のターニングポイントがあり、それらが表現されているのを理解できるのは映画中盤からではないでしょうか。
今回は『人生スイッチ』の中でも気になる、野生動物の映像、飛行機と老夫婦、そしてスイッチの真相に迫ります。
原題『Relatos salvajes』
本作の原題は『Relatos salvajes』というスペイン語の映画です。英語の原題は『Wild Tales』。
英語を見てみると、少しわかってくると思いますが、日本語のタイトル『人生スイッチ』とはだいぶ意味が違います。
原題を象徴
スペイン語や英語の原題を訳すと「野生動物」という意味になります。
こう聞くと、飛行機が老婦人に突っこんだ後、野生動物の映像が出てくる意味がだんだん分かってくるでしょう。
あの野生動物の映像は、まさに原題を象徴していたのです。
日本語のタイトルのみを見ると、どうしても野生動物の映像に首をひねってしまいますが、原題を知れば納得のはず。
では、原題を含め、野生動物のシーンにはどんな意味があったのでしょうか。
映画のイントロ的役割
冒頭の野生動物が映るシーンは、映画のイントロ(自己紹介)のような役割があります。
野生動物ということは、本能のままに動く生物だということ。一方、人間には理性があり、いつでも本能というわけではありません。
映画内のスイッチがまさに、その境界線を示しており、「パンク」や「おもてなし」といった登場人物はまさに本能のまま動いていました。
これから先の映像は、人間が押してはいけないスイッチを押して「本能のまま動く」、冒頭の野生動物にはそのような意味があったのです。
野生は押す。人間は押さない。
先述しているように、野生動物は簡単に自分の「本能」のボタンを押します。
一方人間だからこそ、理性が働き「本能」のボタンを押さないよう抑制しますが、そこに確実に本能は潜在しているのです。
冒頭では野生動物は計18種類出てきます。そのほとんどが、肉食動物であり、草食動物のキリンやシマウマは顔が映っていません。
食べ「られる」側の動物として、全身がしっかり映し出されていたのは羊のみでした。
つまり映し出された動物のほとんどが、他の動物を喰らう生き物なのです。
そう考えると、19種類目に現れる他の動物を喰らう生物が、「人間」であると解釈できます。
小さな選択が大きな結果に
では、本作タイトルにもある「スイッチ」とは何なのでしょうか。
押してはいけないスイッチを押すとどうなるのか、これを考察していきます。
車を引き返すかどうか…
「パンク」に出てくる新車に乗るディエゴは、まさに典型的な負のスイッチを押した人物と言えるでしょう。