あの捉えるのが難しい饕餮を捉えたとなれば自分たち側に優位に事が運びます。

あわよくば出世も有り得るかも知れないという欲があったと思われます。

そうでなければまだ十分に検証がなされていない饕餮に手を出す意味がありません。

正に「奪う」「横取りする」ことが本作の真の悪だということを示しているでしょう。

実験と検証

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2つ目にシャオが饕餮を磁石をどれだけ離せば動き出すかの実験をしたかったからです。

結果としては檻ごとぶち破って暴れ始める饕餮に簡単に倒されてしまいます。

行動原理が中学生レベルですが、ある意味で手柄を奪おうとした因果応報でしょう。

シャオは虎視眈々と如何にして自分側に優位に運ぶかという保身で動いていた節がありました。

他者から奪う者は最後に自分が奪われて終わってしまうのです。

饕餮の崩壊≒都の崩壊

3つ目に皇帝と都の関係がそのまま女王饕餮と他の饕餮のメタファーだからです。

シャオの失態で都は女王饕餮によって占領され、それをウィリアム達が倒すことになりました。

権威あるものがラストではウィリアム達によって崩されていく構造になっています。

正に前述したようにトップが威厳を失った組織は崩壊の一途を辿るしかありません。

この権威あるものが崩れていく図式は如何にもチャン・イーモウ監督らしい作風です。

大事なのは功利よりも信用

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考察を重ねていくと、本作は確かに荒削りながらも非常に重要なメッセージがあります。

それは戦いの中にあっても大事なのは功利よりも信用であるということです。

ウィリアムにしてもリンにしても最後まで他者を信用して頑張った者は報われます。

しかしシャオやバラード・饕餮のように他者から奪う者は最後に自分が奪われて終わるのです。

どんな時もやはりまず与えて信用を勝ち取り、そして最後に利を取ることが基本にあります。

王道の物語の中にもしっかりとした人生の哲学が善悪の基準に盛り込まれているのが本作の白眉です。

まとめ

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いかがでしたでしょうか?

本作は確かに中国と米国の合作による超大作ということで数々の実験的要素を含んでいました。

それら全てがきっちり結実したとはいいきれず、未消化に終わった要素もあるでしょう。

しかし、決して無駄ではなく中心にはチャン・イーモウ監督の作風がしっかり備わっています。

本作の善悪の形は次作『影武者/SHADOW』でより洗練された形で進化・表現されているのです。

本作で得た様々な教訓を決して無駄にはせず、次回作へと繋げていったのではないでしょうか。

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