ランサムの依頼は匿名だった故、現場で行った調査は彼に依頼を出した人物とその動機です。
マルタに注目したものの依頼主である兆候が見えないこと、さらに遺産相続人という立場に置かれたことから、真の依頼主を調査。
ハーランの死を確信していた人物の中から、マルタや自分との繋がりを探すことでランサムにたどり着くことができたのです。
名探偵ブノワ・ブランの登場
ライアン・ジョンソン監督の「アガサ・クリスティに捧ぐ」という見出しの如く、本作はまさにエンターテイメントミステリー。
殺人動機が復讐ばかりの昨今のミステリーの中、「ナイブズ・アウト」で展開するのはアガサの描いたような人情と人間臭さが入り混じる事件。
死ぬ本人が描いたトリックは早々に解説され、探偵の手でひも解かれる真相は切なさを感じさせつつも面白いの一言。
名探偵ブノワ・ブランのアクの強いキャラクターがスパイスになり、ランサム逮捕の瞬間には爽快さすら感じます。
ハーランの死因を探るだけではなく、遺産相続問題までもを解決するその手腕はまさに現代に生まれた名探偵。
ブノワ・ブランは、ホームズやポワロ、コロンボに並ぶ新たな存在となったのです。
莫大な資産を相続したマルタのその後は
マルタは心優しい女性でした。スロンビー家のことを考えつつも、ハーランの意思を尊重して遺産を相続。
遺産の使い道に悩み、ブノワに助言を求めました。
スロンビー家に遺産を分けたのか
ラストシーンで気になるのは、ベランダに立ち家を去るスロンビー家の人々を見送るマルタの姿です。
上から見下ろすという行為は、彼女の立場がそれまでマルタを見下していた人々と逆転したことを表現していたのでしょう。
彼らがマルタに対して見せた思いやりは、自分たちに莫大な遺産が入ることを前提とした慰めのようなもの。
立場が逆転した以上、マルタからハーランの遺産を分けることは、彼女から彼らに情けをかけることになるのです。
自分のルールに従う
あなたは、自分のルールを守り抜いたからこそ、ゲームに勝ったのです。
引用:ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館/配給会社:ロングライド
ハーランの死から始まった遺産相続事件は、ブノワにとって推理ゲームのようなものだったのでしょう。
彼の口から出た言葉は、彼女の真っ直ぐな性根が美しい、大切だということを湾曲して伝えたように感じます。
正しさや優しさを彼女のルールという辺り、ブノワは少々捻くれた人物のようです。
しかし、そんな彼の言葉はマルタにしっかりと響いていました。
手を差し出すべきですか
引用:ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館/配給会社:ロングライド
マルタの質問に対するブノワの答えは、YESともNOとも受け取れるもの。
短い付き合いではあったものの、彼女を信じたブノワの言葉はマルタの迷いを少しだけ軽くしたのかもしれません。
ハーランが残す次作の伏線
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』は、仕掛けのある館や2重3重の謎解きにミステリーファンを唸らせる作品です。
スマートフォンや科学捜査がある中でも感じられるレトロミステリーの魅力は、ブノワ・ブランの存在無くしてはありえません。
そして気になるのは、ラストシーンでリンダ(ジェイミー・リー・カーティス)が持つ手紙のメッセージ。
愛する娘よ、彼はお前を裏切ってる
引用:ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館/配給会社:ロングライド
あぶり出しで出てきたたハーランからのメッセージは、次作もこのメンバーが事件の中心となることを物語っています。
新たな名探偵の事件はどこまで続くのか…