これらの人たちが現代の特権階級を実質的に形成しています。入場券すら買えない人たちはいつまでたってもゲームに参加することはできません。
彼らの勘違い
不思議なことに彼ら特権階級にいる人たちは自分たちの特権が本当はどのようなメカニズムで得られているか考えようとしません。
彼らの多くは自分の実力や努力が現在の地位を確立したと勘違いしているのですが、現実のメカニズムは違います。
彼らは単にたまたま親から豊かな資産を受け継いだり、裕福な家庭環境によって高い学歴を得ただけなのです。
より富める者がその富を利用して益々豊かになり、汗水垂らして働いた人たちが受け取るはずの果実の多くが資本家達に吸い取られているのです。
資本主義の未来
では資本主義の未来はないのでしょうか。ベルリンの壁が崩壊し、壮大な社会実験だった旧ソ連の社会主義の失敗が明らかになりました。
冷戦の終結を機に、これからは資本主義の時代になると思われたのは幻想だったのでしょうか。
確かに資本主義が成熟すれば自ずと格差も縮小していくはずだという楽観的な見通しは幻想だったことが明らかになりつつあります。
ピケティは格差を助長する現代社会のメカニズムを鋭く指摘するだけでなく、これを是正する処方箋も示しています。
ピケティの処方箋
格差拡大を是正するためピケティが提唱する処方箋のポイントは二つです。
富裕層への極端な累進課税や相続税の見直しなどによって持てる人たちから富を吸い上げ、それを労働者達に適切に配分することが一つ目になります。
そして二つ目は世界中にあるタックスヘブンへの資金逃避を防止する世界的な徴税システムの確立です。
これらが実現すれば頑張る人たちが報われるより公平な社会の実現に大きく寄与することでしょう。
【21世紀の資本】は資本主義の幻想から目覚めさせた
ピケティは一般市民が日頃から感じている疑問の背後に存在する本質的な問題をあぶり出してくれました。
資本主義は究極的には万民を豊かにするといった楽観論や頑張る者には成功の切符が用意されるというアメリカンドリームは幻想なのです。
政治による経済ステムへの適切な関与がなければ資本主義社会の未来は暗いとピケティは説いています。
映画【21世紀の資本】は原作本で700ページにも及ぶ彼の著作を、歴史的な映像や小説なども駆使して103分で我々にそのエッセンスを伝えてくれました。
しかしながら、敢えていえば【21世紀の資本】を通じてピケティの主張を理解しただけでは不十分です。
わずか1%の富裕層が全体の富の20%を占有するという格差社会の現実は人ごとではないのです。
我々一般市民もなすべき行動を模索する必要があるのではないでしょうか。