1度出来上がったからとそこで満足するのではなく、何度も自身の演奏を練り鍛えています。
その徹底した努力の量こそが本番の即興フラメンコを可能にしているのです。
徹底した稽古や努力により裏付けがあって初めて即興といった応用が出来ます。
評価を得ても決して胡座を欠かず努力し続ける姿が音楽への情熱になっていたのでしょう。
名ギタリスト達との出会い
2つ目にその音楽人生の道半ばで多くの名ギタリスト達と出会ったことも大きいでしょう。
ジョン・マクラフリンを筆頭に数々の名ギタリストから違う音楽や演奏法を教えて貰ったのです。
その経験が新しい刺激となって常にパコの音楽を錆び付かせない新鮮なものとなりました。
もし自身のスタイルに固執し続けて他者との交流を拒めば、ここまでの大業はなかったかもしれません。
そうした外の音楽に触れ続けた刺激はパコの中で大きな血肉となって活かされています。
伝統主義への反抗
そして何よりも伝統主義への反抗がパコにとって最大の動機になっていました。
人は安定して落ち着いた状態よりも何か壁や障害がある方が燃え上がるものです。
パコにとってはフラメンコギターの凝り固まった伝統主義がその壁・障害でした。
そして持ち前の完璧主義と飽くなき向上心でしっかり結果を出し、スペイン音楽を塗り替えています。
道なき道を行き、沢山の道標を後生のために残すことが彼の探究心の根源だったのではないでしょうか。
変化し続けること
こうしてみると、本作はパコの生き方を通して「変化し続けること」の大切さを教えてくれています。
フラメンコギターの世界に限らずどの分野においても変化し続けること、次を考えていくことは大事です。
パコがフランスの革命児と呼ばれた所以は才能や努力以上に「変化し続けること」が核にありました。
もし彼がフラメンコギターの伝統を良しとして保守にこだわっていたら歴史に名を残せなかったでしょう。
成功や革命・革新は常に変化と表裏一体であり、変化し続けることをしない人は大きな成果を残せません。
勿論いい変化だけではなく悪い変化もありますが、それら全てを受け入れる覚悟をもって生きること。
これが何よりも孤高の天才ギタリストとして生き続けたパコの示してくれた人生哲学ではないでしょうか。
激動の時代にこそ必要な人
本作が2015年という死後間もない時期に息子の手で作られたことには大きな意味があります。
それは激動の時代が到来し、パコのような人こそ必要であるということではないでしょうか。
来たるべき時代の変化に必要なのは単に先人の模倣を守り続ける基本に忠実な人ではありません。
寧ろ既成概念や固定観念を独自のスタイルで打ち壊す人こそが求められるのです。
勿論それは誰にでも出来ることではないし、パコのような偉人になれるのはほんの一握りでしょう。
しかし、彼のように気高い芯を持ち変化を恐れずに生き続ければ必ず道は開けてきます。