もしかしたら看守のせいでドガは精神が狂ってしまうかもしれなかったのです。
そんなドガをパピヨンは自分の身も顧みず命を賭けて助けてくれました。
即ち利害関係ではない心からの仲間だったのではないでしょうか。
だから命の恩人であると同時に人間性で信頼出来る仲間だったのです。
正に人生で1度出会えるか出会えないかという奇跡の人だったのでしょう。
独房での助け
2つ目にパピヨンにとってもまたドガは唯一無二の相棒だったことが窺えます。
それが出ていたのが独房のシーンで食べ物を差し入れしてくれたことです。
ここでパピヨンは看守から差し入れした者の名前を1度も口外しませんでした。
もしここで口外してしまえばそれは即ちドガを裏切ることになるからです。
恩返しという形ではありますが、ドガもまたパピヨンに資金や食糧の援助を惜しみません。
正にギブアンドテイクの素晴らしい関係性ではないでしょうか。
“信じる”ではなく”疑わない”
ここで大事なのは“信じる”ではなく“疑わない”ことではないでしょうか。
パピヨンは最後の最後までドガのことを1度も疑ったことはありませんでした。
そして、そんなパピヨンのことをドガもまた1度たりとて疑ったことはありません。
何度離れても根底の部分でその想いが変わったことはなかったのです。
出会い方さえ違っていれば、2人は最高のパートナーであれたかもしれません。
2人を表わす関係は友情ではなく絆ではないでしょうか。
利害ではなく情で繋がる
こうしてみると、本作で大事にしていたものが何であるのかが見えてきます。
それは本当に大事なものは「利害」ではなく「情」で繋がっているということです。
パピヨンとドガは決して利害ではなく情の部分で深く通じ合っていました。
犯罪者同士であっても、人間性の部分で深く繋がることは出来るのです。
そしてそれを大事にしていけば、いつか道は開けてくることを身を以て証明しました。
今生の別れであったとしても、パピヨンもドガもお互いを忘れることはないでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本作は結論自体は割とありがちというかどの時代においても通じる普遍的なものです。
しかし、だからこそ普通のドラマの手法や設定では説得力をもって描けなかったでしょう。
戦時中という厳しい時代背景と犯罪者同士という設定だからこそ有効に描けたと思われます。
こうした個人の自由や情を主張することがどれだけ勇気の要る行為だったことでしょうか?
本作の価値は何よりもその個人の尊厳を犯罪者を通して示したことにあります。
単なる犯罪者のドラマに終始しなかったからこそベストセラーとなり、傑作となったのです。