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映画『サマー・オブ・84』はタイトル通り1984年の夏を舞台に描いたサイコスリラー作品です。
監督がランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセルの3人組なのも珍しいでしょう。
80年代のジュブナイル映画をノスタルジックに描きつつ、終盤へ向かう怒濤の展開から目が離せません。
とある少年デイビーがエイリアンや未解決事件などに興味本位で首を突っ込む所から全てが始まります。
友人のウッディ、イーツ、ファラディらと共に連続殺人鬼の正体へ迫る4人はどうなるのでしょうか?
本稿ではその殺人鬼が思春期の子供だけを狙う理由をネタバレ込みで考察していきます。
また、犯人がデイビーを殺さない理由や屋根裏部屋に潜んでいた狙いも併せて読み解きましょう。
架空の現実化
本作全体の秀逸な所は単なる80年代ジュブナイル映画のオマージュに終始していない所です。
青春を迎えた少年たちの死と隣り合わせのひと夏の冒険は確かに『スタンド・バイ・ミー』を彷彿とさせます。
しかし、本作はそのノスタルジックさ漂う演出から終盤で一気に主人公達を恐怖のどん底へ突き落とすのです。
これは「架空の現実化」を意味し、かつて架空の世界だった筈の出来事が現実化する恐ろしさへ繋げています。
連続殺人事件は決して対岸の火事ではなく、身近な所にこそ潜んでいるのだと受け手に思わせる絶妙な手腕でしょう。
そんな構造の本作に散りばめられた数々の仕掛けやメッセージを読み解いていきます。
思春期の子供を狙う理由
結論から先にいえば連続殺人鬼の正体は何とデイビーの隣人のマッキーだったのです。
身の毛もよだつ程の恐ろしい事実が明らかとなりましたが、問題は彼が思春期の子供を狙う理由でしょう。
ここではマッキーの動機を、散りばめられた数々のメッセージから読み解いていきます。
不安定な心理を利用している
1番の理由はやはり思春期の子供達の心理を巧妙に利用しているからではないでしょうか。
マッキーはデイビーをはじめ事件の探索に首を突っ込む少年達の心理を知り尽くしています。
だからこそ終盤では首を突っ込んだデイビーとウッディを誘拐してのゲームを行ったのでしょう。
マッキーの行動は非常にスマートで、単なるサイコパスではない知能犯の側面が強いのです。
そうした思春期特有の心理面の不安定さこそが狙い所だったと推測されます。
騙されやすい
2つ目に思春期の子供は心理面が不安定故に簡単に本質を見失ってしまう程騙されやすいからです。
顕著だったのが物語中盤で1度連続殺人鬼の犯人を捕まえたとしてマッキーが英雄になる所があります。
あれは完全な自作自演であり、自分を英雄に仕立てることでデイビー達を騙せると思ったのでしょう。
しかし、唯一の誤算は隣人のデイビーであり、彼だけが騙されず正体を正確に看破したのです。
即ちデイビーはマッキーにとって全くの想定外であったということになります。
ギャップを演出
そして3つ目にマッキーがそんなことをするはずがあるまいというギャップを演出するためです。
デイビーは別として、普通の人は連続殺人鬼の正体がまさかマッキーであるなどと思わないでしょう。