人間性に問題のある彼女の行動はパーティ会場でエスカレート。
泥酔した彼女は、カウチで寝転がりながらいかに金持ちと娘を結婚させるかを語ります。
若くて魅力的で、そのうえお金持ち
ジェーンがビングリーさんと結婚できたら、妹のお前たちもお金持ちに嫁げる
引用:高慢と偏見とゾンビ/配給会社:ギャガ
ベネット夫人のセリフをダイレクトに聞いたフィッツウィリアムは、親友のことを第一に考えて行動。
ジェーンはビングリーの資産狙いで近づいていると告げ、2人を引き離したのです。
引き裂かれた2人
資産狙いだなんだと周囲が捉えたとしても、ジェーンとチャールズの恋は本物でした。
ダーシーは、チャールズがジェーンを思う気持ちが本物だと感じたからこそ、物理的にジェーンの元から引き離したのでしょう。
資産狙いのジェーンからチャールズを守るため、フィッツウィリアムはビングリー家をネザーフィールドから送り出したのです。
悲壮な恋を時間が忘れさせるまで2人は合わないほうがいい。
そう考えたからこそ、ダーシーは親友であるチャールズをベネット家から遠ざけたのではないでしょうか。
ゾンビ映画かロマンス映画か
オリジナリティの高い本作は、現代のゾンビとその在り方が少々違うのが特徴です。
脳を食べるという「バタリアン」的なゾンビ欲求は持っているものの、人と会話し騙すような知能を保持。
知能が無くなったことで肉体的リミッターを外すゾンビとは違い、人類との共存すら視野に入れられる存在となっていました。
知力の高いゾンビたち
作中で登場するゾンビは、人の脳を食べたことで知性を無くす一般的なゾンビと、それ以外の上流ゾンビに分かれていました。
上流ゾンビは外見こそ腐っていますが、豚の脳を食べることで人間と同等の知性を維持。
ゾンビでありながら士官として活動していたウィカム中尉を代表に、一般社会に紛れたまま生活することも可能としていました。
ゾンビ全てがこのような存在であれば、ゾンビと人との共存世界は確立できたのかもしれません。
しかし、人間の脳を食べたいという欲求がある限りその願いは聞き入れられないのが現実です。
ウィカムが舞踏会にゾンビを手引きしたように共存世界で1度でもゾンビが裏切れば、人類の滅亡は目に見えています。
武術の違いによる階級区別
階級社会の形を変えた演出がゾンビと人との戦い方です。
ゾンビから身を守るために学ぶ東洋の武術は、裕福なものは日本で、賢いものは中国で学ぶとされていました。
しかし、「賢いもの」と言われるものの、カンフーを学んだ者は日本に渡った人よりも下層階級と判断されるのが世の常。
カンフー使いのエリザベスは、フィッツウィリアムが刀を振るう姿を見て自分との身分の違いを感じていたのです。
このような階級差別表現は、階級意識が薄くなった現代でも分かりやすく、ストーリーの邪魔をしていません。
アクションを取り入れることで映画の見せ場を増やすと共に、身分の差を上手く取り入れたのがこの東洋の武術という設定なのでしょう。
近代的で観やすくなった名作文学映画
『高慢と偏見とゾンビ』は、小気味よいテンポで展開するストーリーが魅力のゾンビ&ロマンス映画です。
高慢だ資産狙いだと偏見を持つものの、お互いの信念を貫き戦う姿に惹かれ合う男女。
すれ違いが生む人間関係は、ゾンビの襲撃や拳で語り合う男女の姿といったスパイスを取り入れることでコミカルに進行。
バー・スティアーズ監督の手腕により、誰が観ても楽しめる恋愛ドラマへと変貌したのです。