チームを組んでも理想が手に入らないという非情な現実を知り戦いしか残らなくなったのです。

最後の戦いで死んでしまおうが、自主性に基づいた結果ですから誰も正しい間違いを下せません。

妹の幻が見えた意味

幻

意味深に描かれているシーンの1つがルカが死んだ16歳の妹アンドレアの幻を見る所です。

最初は海で泳いでいる時に見ましたが、その後節目節目でルカの前に出てきます。

ホラーともファンタジーともいえるこの幻が見えたことには何の意味があるのでしょうか?

死と隣接した場所

隣接界 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

最初に海の中で見えたのは恐らく海が死と隣接した場所であるということでしょう。

映画において海とは大体「」や「恐怖」の象徴として描かれることが多いです。

「ジョーズ」や「タイタニック」「ディープブルー」などはその典型となっています。

即ちルカはこの時に死と隣り合わせの場所に来ていたことを意味するのです。

そしてそれが物語後半のルカのドラマを形成していきます。

逃げられない罪

後に妹アンドレアはルカが自分で殺したことが明らかになっています。

それが度々現われるのは妹がルカにとって「逃げられない罪」の象徴であるということです。

露骨な形で表現されていないだけで、ルカはずっと妹を殺した罪悪感を抱えて生きていました。

恐らくは後半だけではなく、物語開始以前からも見ていたのではないでしょうか。

ジェシカたちと出会ったことでそれが少しの間紛れて見えなかったものと思われます。

ところがそうではなく物語が進めば進む程よりその罪悪感は増す一方なのです。

そんなルカの罪悪感に蝕まれていく心の様を表現していたことが窺えます。

迷いの消滅

そして終盤、ルカは特殊部隊と戦うことを決めた瞬間に妹の幻は消滅します。

しかし決してルカが改心して罪を償おうと思ったから消えたわけではありません。

寧ろ逆でルカは孤児として、犯罪者として最後まで社会に抗い続けることを決意するのです。

人を殺した罪は決して消えるものではないし、社会的弱者であることも自力では変えられません。

だからこそ特殊部隊と決死の覚悟で戦うことで開き直ったのではないでしょうか。

とても悲しい話ですが、ルカは最後まで妹殺しの罪と向き合い償うことは出来なかったのです。

カミーユに手紙で過去を告白した真意

告白 (中公文庫)

そしてもう1つ、孤児のミカエルには付き合っていたカミーユという恋人がいました。

彼はカミーユに手紙で自身の犯罪者としての過去を告白したのです。

もしかしたらカミーユを殺害したかもしれないとまでいってみせました。

果たしてそこまで告白した真意とは何だったのでしょうか?

嫌って欲しい

1つ目にミカエルは犯罪者としての過去を告白して嫌って欲しかったのでしょう。

きっかけは海辺での出会いがきっかけでルカと大喧嘩になったことでした。

ここでカミーユは自分のせいで2人が喧嘩したのではないかと怖がっていたのです。

その恐怖心を和らげると同時にミカエルはカミーユと一緒にいられないと思っていました。

だからこそ手紙で自身の立場や社会的弱者という素を明らかにしました。

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