こうすることでカミーユが自分から離れてくれることを願っていたのです。
関係を持っても結ばれない
予想外にもミカエルはカミーユに受け入れて貰え、肉体関係まで持つに至ります。
並のラブストーリーであればミカエルが孤独から救われる方向に持っていったかも知れません。
しかし、そうは問屋が卸さないのが本作の実に恐ろしい所で2つ目の落とし穴が待ち受けていました。
それこそがライデンと結ばれないまま焼身自殺してしまったジュリアンの焼身自殺です。
これはライデンのみならずジェシカたち全員に影響を与え、ミカエルも例外ではありません。
ここでミカエルは決して一緒にはいられない自分の運命を思い知って諦めるのです。
そう、カミーユへの告白は2人が決して結ばれないことを示していたことが窺えます。
恋愛至上主義へのアンチテーゼ
そんなカミーユは最終的にミカエルとルカの僅かに残った良心によって安全な建物の外へ移動されます。
どこまで行ってもカミーユは自分たちとは違う立場の人間であることを強調しているのです。
これは個人の罪や孤独といった問題を恋愛で解決しようとする恋愛至上主義へのアンチテーゼでしょう。
そんな重苦しい問題をそんな行きずりの恋などという上辺で解決出来る程甘くはないのです。
それ程にオーファン達が抱える問題が根深いものであることを本作は示しています。
若者の社会離れ
こうして見ると本作が描いているテーマは凄く本質的な「若者の社会離れ」ではないでしょうか。
ジェシカたちオーファンはその映像表現も相俟ってどこか浮世離れした存在にも見えます。
それは恐らくジェシカたちが現代社会との断絶を余儀なくされた人たちだからです。
社会がSNSなどによって只管に「繋がること」「絆」「恋愛」ばかりを表に出してきました。
しかしそのことがかえって若者達の心を圧迫し孤独を深めているという深刻な問題があるのです。
だから本作の孤児たち=オーファンとはそんな現代社会が生み出してきた弊害を意味します。
彼らはかつての学生たちのように社会に反旗を翻すことでしかアイデンティティを示せないのです。
それがあの悲しい結末へと繋がったのだと推測されます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本作は説明こそ少ないものの、芯の部分で非常に的確に現代社会の本質を浮き彫りにしています。
それは価値観の多様化とネットワークによる情報管理によってかえって奪われた個人の尊厳です。
ジェシカたちオーファンはテロリストとして描かれますが、そのテロリストを生み出したのは誰か?
それが他ならぬ管理社会の象徴として描かれる特殊部隊であり、もっといえば現代社会そのものです。
テロリストは勿論決して世に称賛されていいものではありませんし、実際作中でも否定されています。
しかし、テロリスト=社会のはみ出し者を排除することが本質的な解決に繋がるのでしょうか?
本作は俯瞰した所から見える社会の問題を抉り出すように卑近な視点に落とし込み描いているのです。
そのように見ていくとき、本作は実に鋭い社会問題を扱った力作であることが見えてくるでしょう。