彼れらにとって人生を変えるほどの悲惨な事件だったとしても、世界は何も変わらず朝を向かえています。
まるで事件に関して無関心であるかのように…。
現実社会でも世界中に広がる犯罪は、知らぬ間に起きています。
まるで悪夢を見ていたかのようなパットとアンバー、そして観客は突然リアルな世界へ投げ出されたかのような気分になるのです。
ジェレミー・ソルニエ監督の描く世界
監督ジェレミー・ソルニエは、独特の世界観を持って業界で高く評価されている監督です。
本作でも彼の手腕は、至る所で光っていました。
ネオナチという存在
本作で敵となったネオナチは、今なお残る戦争の置き土産です。
本作では詳しく描かれていませんでしたが、ネオナチという看板の影で暴力などの犯罪を犯すものも多く、問題視されている存在です。
白人主義から、移民や外国人労働者の排斥を訴え、暴行・略奪などの犯罪行為を行うケースが増加している。
引用:グリーンルーム/配給:A24
ネオナチを敵におきダーシーという強いリーダーを出現させることで、思想の危険さも訴えているように感じました。
監督はネオナチの思考を深く描くことなく、ダーシーという底知れぬ恐怖を存在させています。
あえて彼らの素性を詳しく描かないことで、観客は恐怖を感じていくのでしょう。
また、ドアを一枚挟んでの攻防は敵の姿を一切映していませんでした。
知りえない現状という恐怖を上手く演出し、本作でもジェレミー・ソルニエ独特の世界観は多くのファンを虜にしています。
メイコン・ブレアとのタッグが最高
本作でどこか優し気なゲイブを演じていたメイコン・ブレアは、ジェレミー・ソルニエ監督には欠かせない存在といえるでしょう。
二人は小さい頃からの友人で「Murder Party」「ブルー・リベンジ」と次々にタッグを組んでいます。
本作でもメイコン・ブレアは敵でありながら、どこか憎めない味のある人物を演じていました。
今後の二人の作品にも注目していきたいものです。
全てを観せないスリラー作品
本作は全てを観せず、観る者の想像という恐怖を演出しています。
エイミーを殺したとされるワームの正体も最後まで謎のままでした。
独自の世界観が魅力の映画といえるでしょう。
またスリラー映画なのに、どこかヒューマンドラマを観ているような感覚もします。
無人島へ持っていくバンドというキーフレーズを上手く使い、観る者をバンドメンバーに感情移入させていく手腕は見事です。