久も自分と同じように人生の挫折を味わったことを知り、互いに相手を認め過去の挫折を振り切ることができました。
残念ながら、最後の勝負には敗れますが、この勝負にはひとつの試合だけにとどまらない大きな満足感を感じていたのです。
人の目線を気にすることはせず、自分の人生に自信が生まれた多満子。
久も同様に、家族との関係に悩んでいましたが、多満子となら前を向いて生きていく自信が持てたのです。
一度負けたからって人生の敗者になったわけじゃない
ひとつの試合の勝ち負けなんて、長い人生を考えれば、小さな事なのかもしれません。
フラワー卓球クラブの面々には、それぞれが人生の岐路で迷うほど重くて深い事情がありました。
そんな今までの自分から一歩踏み出す勇気を試合の中で勝ち取ったのです。
負けた悔しさよりも、未来に希望が持てたことの方が何倍も意味があります。
臆病になって逃げてしまったり、アクシデントに試合が続けられなくなったりした最初の大会。
中途半端なままでは終われないと考えた彼らの勇気。
勝負に負けても、自分の全てを試合にぶつけることができた満足感や達成感が試合の後の爽快な気分につながったのです。
多満子はなぜヨリを戻さなかったのか
なぜ多満子は、江島とヨリを戻す道を選ばなかったのでしょう。
明暗を分けた奇跡と偶然
多満子にとって江島との奇跡的な出会いは、恵まれない過去を払拭(ふっしょく)する絶好の機会だったはずです。
さりげない江島の優しさに身をまかせることで普通の幸せを手に入れられると感じた多満子。
しかし、多満子は江島が陰で話している自分の悪口を聴いてしまいます。
いくら後でフォローされても、多満子は心底から江島を信じることができなくなりました。
多満子にとって、江島は自分の人生を輝かせてくれる存在ではなかったのです。
一方、偶然の出会いから始まった久との関係は、多満子の中に今までにない温もりを感じさせました。
ともに過ごす時間が増えるにつれて、自分を輝かせてくれるのは彼だと確信したのです。
多満子への久の想い
久はどう思っていたのでしょう。
ボクシングで挫折を味わい、家族からも疎遠になって、生きる気力を失っていた時に多満子が偶然現れたのです。
長い間心から笑うことを忘れていた久は、ホースでの水の掛け合いで久しぶりに本気で笑う楽しさを思い出しました。
多満子と一緒に過ごす時間は、生きる喜びを感じられる瞬間がちりばめられていたのです。
多満子と江島との決別には、久の存在が大きく影響していました。
活気のない卓球クラブに顔を出した理由とは
母から天才卓球少女がするような指導を受けた多満子にとって、卓球は小さい頃の嫌な思い出の象徴。
特にフラワー卓球クラブは母の厳しい訓練を思い出す場所です。