出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B089FQGMNG/?tag=cinema-notes-22
映画『ロマンスドール』は『ふがいない僕は空を見た』で有名なタナダユキが自ら監督・脚本を務めた作品です。
主演を高橋一生と蒼井優という実力派が務め、癖の強い哲雄と園子という個性派の夫婦をしっかり演じられています。
ピエール瀧の逮捕により公開が半年程遅れたことも話題となりましたが、クオリティはそれを払拭する出来です。
ラブドール職人となったフリーターと結婚した元美術モデルの捻れたラブストーリーが実にリアルに描かれています。
本稿では最後に哲雄が呟いた言葉の意味をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、園子が「自分を作って」と言った理由や哲雄の嘘と園子の秘密の真相も併せて読み解きます。
愛とは何か?
本作はラブドールという裏の業界にしか知られていないものがテーマですが、単なるポルノ映画ではありません。
哲雄と園子、2人の関係を中心にして「愛とは何か?」について深く問う物語となっています。
性と愛は映画においても根源的なテーマですが、だからこそ再現もまた難しいものなのです。
更に風俗や浮気・不倫など人間の欲望も物語に絡んでくるので、匙加減を誤れば低俗な官能映画にしかなりません。
そこで本作は「人形を作る職人」という芸術家の部分を核に据えて展開したことでバランスが非常に絶妙でした。
そして何よりも本作が際どい性のテーマでありながら上品に仕上がっているのは役者達の演技力でしょう。
高橋一生と蒼井優を中心にきたろう・渡辺えり・浜野謙太といった実力派の役者で固めたことが成功の秘訣です。
そんな本作が紡ぎ出す愛の物語は果たして何を伝えてくれるのでしょうか?
最後の言葉の意味
結末からいえば哲雄と園子は最終的に園子が後述するある原因で死別することになりました。
最後に哲雄は海岸で見たダッチワイフをブスだと切り捨て、園子のことをこう評します。
すけべでいい奥さんだったなあ…
引用:ラブドール/配給会社:KADOKAWA
この言葉の意味をここではじっくり考察していきましょう。
上品さと下品さ
まず1つ目にこの台詞は園子の「上品さ」と「下品さ」を表わしています。
相反する2つの要素ですが、どちらも園子の人となりを見事に当てているのです。
園子は夫の哲雄の嘘にも寛容で、何があっても哲雄に寄り添ってくれる上品さがありました。
しかし一方では夫に毎晩性行為を求めたり自身をモデルにした人形を作ってと頼むのです。
その最期も夫と抱き合った末の腹上死で、中身は凄く下品で性に貪欲な人でもありました。
その相反する両極さが園子という妻の魅力だったのではないでしょうか。
優越感
2つ目にそんな園子の全てを知っているのが自分だけであるという優越感を意味します。
園子は最終的にラブドールとして伝説の存在となり、多くの人の心に残りました。
元モデルということもあり、周りからすれば高嶺の花でもあったわけです。
しかし、哲雄以外の人はそんな園子の表面上のイメージしか知りません。
その裏にある儚さや脆さ・弱さ・下品さなど生々しい側面は哲雄しか知らないのです。
ラブドールの「そのこ」ではない本物の「園子」を知っている優越感が見て取れます。
性ではなく情
そして3つ目に哲雄と園子が決して「性」ではなく「情」で繋がっていたという意味です。