出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B081J66SXD/?tag=cinema-notes-22
【アド・アストラ】はブラッド・ピットの秀逸な演技が光る近未来の人類と宇宙を描いた作品です。
単にストーリーを追うよりもロイや父親クリフォードの心理状態を考えさせる展開が興味をかき立てます。
宇宙時代になっても普遍的に残る人間の心理やAIと共存せざるを得ない人類のあり方まで考えさせられる深い作品に仕上がっています。
海王星に向かう前のロイと地球に帰還したロイは何が変わったのでしょうか。
そこには彼の心の奥底に閉じ込めていた父クリフォードとの深い関係がありました。
地球に帰還したロイの心理
父親のクリフォードと対面し結果的に父親を宇宙の彼方に見送った後、地球に帰還したロイは以前の彼とは中身が変わっていました。
何が彼を変えてしまったのでしょうか。ロイにとって父クリフォードとはどのような存在だったのか、詳しく見てみましょう。
ロイ対クリフォード
ロイの父親クリフォードは地球外生命体の探索に人生の全てを賭け、太陽系の奥深く分け入った人類の英雄でした。
このミッションのためクリフォードは家庭をなおざりにし、妻や子であるロイを捨て去ります。
ロイにとってそのような父親は本来憎むべき存在でした。自分自身だけでなく自分が愛する母親をも見捨てたのですから当然です。
しかしながらロイは人類全体から英雄とあがめられる父親を表面的には受け入れざるを得ませんでした。
彼の父親への本当の思いはロイの心の奥深くに抑圧されたのです。
本当は憎んでいるのにもかかわらず尊敬していると自分自身にも思い込ませるロイの心は不安定にならざるを得ませんでした。
妻イヴと関係を修復したロイ
ロイはこのような心の不安定さを意志の力でコントロールしようとします。
父親と同じ宇宙飛行士として何事にも動じない安定した精神状態を保とうとしたのです。
これには無理がありました。ロイはその副作用として他者との人間的な深い関係を築けなくなってしまいました。
このため妻との関係も崩壊してしまいます。それでもロイは作り物の自分を捨てることができませんでした。
ロイは海王星で父親のクリフォードと向き合うことによって、心の奥底にしまい込んでいた父親への思いを顕在化することができました。