彼女は高子が指摘したように自殺願望があったわけではなく、愛する菊治だからこそ殺して欲しかったはずです。
彼女はもうこれ以上の幸せがないという絶頂の中、死ぬことで最高の死を迎えることが出来ました。
二人の女性の対比
劇中には冬香の他に、同じように不倫の愛に悩む女検事が描かれています。
二人の生き方は上手く対比されていました。
愛を受け取れない女検事
愛した男を犯罪者にしても手にしたいものがあった
最後の女にはなれるかも知れない
引用:愛の流刑地/配給会社:東宝
長谷川京子演じる女検事織部は、冬香の死を上記のように分析していました。
このセリフは彼女の心の内なのでしょう。
上司である稲葉の心を独り占め出来ないからこそ、彼の心に自分を焼き付けたいと思った…。
織部は本当に愛されていた冬香をうらやましく思っていたはずです。
愛され幸せだった冬香
冬香は菊治が自分の願いを聞き入れてくれると知っています。
それは彼から愛されていると知っているからです。
劇中には織部と冬香それぞれに、雨で濡れるシーンがありましたが陰と陽のように対照的な演出がされています。
冬香は殺された可哀そうな女性ではなく、本当の幸せを知った女性だったのでしょう。
母親が証言台に立ったのは冬香の為
菊治の為ではないといいながらも、証言台へ立った母親は何を思っていたのでしょう。
娘の為に真実を明らかにしたい
雪国の女は大人しそうに見えても、心の中にはきっついものを持っていますから
引用:愛の流刑地/配給会社:東宝
母親は裁判の中で、徹のいったことを覆すような証言をしています。
徹は冬香の真実を知らなかった、母親もそれを感じたのでしょう。
大切な娘だからこそ、真実を明らかにしたかったといえます。
娘の意思を尊重した
結果的に菊治を擁護する形になりましたが、菊治に殺されたという判断はしてほしくなかったのではないでしょうか。
母親は娘冬香が、あくまでも自分の強い意志で死を選んだと証言したのです。
誰も本当の冬香を知らない
彼女は微笑んで死んでいったんですよ
引用:愛の流刑地/配給会社:東宝
菊治は上記のようにいっていますが、母親だけは冬香のことを理解していたはずです。
菊治のつぶやきの意味
ラストシーンの菊治のつぶやきは何を意味していたのでしょう。
愛を与えたことへの罰
分ったよ冬香、君が与えた刑は8年間
君と一緒にここにいるよ
引用:愛の流刑地/配給会社:東宝
冬香は自分を忘れないように、菊治を罪人にしたわけではありません。
自分に愛を与え過ぎた罪を菊治に科したのではないでしょうか。
もしも菊治と出会わなければ、もしも菊治がこんなに自分を愛さなければ冬香は平凡に暮らしていたはずです。
選ばれた殺人者だった
菊治は裁判中も下記の言葉を口にしていました。
やっぱり俺は選ばれた殺人者だったね
引用:愛の流刑地/配給会社:東宝
君を殺すのは自分でなくてはならなかった…、菊治はどこか嬉しそうでもあります。
冬香に最高の気分を与えたのも自分、死を与えてあげたのも自分だったのです。
そしてそれは冬香がしてほしいことだった…。