そう、最初は演技のつもりだったものが徐々に本物へと変化していくのです。
嘘から出た実
そしてマックスとマリアンヌは車内での肉体関係をきっかけに惹かれ合っていきます。
正に嘘から出た実というもので、最初は単なる職務上の関係がプライベートに発展したのです。
しかも妊娠して子供まで生んでしまうという所にまで行くのが非常に現代的な解釈でしょう。
そう、実はここで2人が本当の意味でALLIED(同盟)になった瞬間を描いています。
しかももう1つの仕掛けがしてあり、それがマリアンヌの名前自体が偽名であることです。
単に本物の夫婦になるだけではなく、そのせいでマリアンヌの素性までバレてしまう展開力。
どんでん返しの構造として秀逸ではないでしょうか。
自殺を選んだ理由
最初からお互いに騙し騙されの関係だったマックスとマリアンヌは終盤で怒濤の結末へ繋がります。
マリアンヌはマックスが逮捕される寸前に1人娘のアナを託して自殺を遂げました。
何故ここで彼女が自殺を選んだのかを見ていきましょう。
罪と罰
まず前提にあるのはこの自殺がマリアンヌなりの罪と罰であるということです。
本作において1番の大罪人はマックスの夫になりすましたマリアンヌの名を借りた何者かでした。
前述したようにマリアンヌは偽名でしかなく、本人は既に死去していたのです。
尚且つ娘アナを人質にしてスパイ行為まで働くなど、人道から外れたことをしています。
だからこそそんな汚れた手で娘を抱くことも、夫を抱くことも出来なかったのでしょう。
即ちマリアンヌ自身が犯した罪をここで自殺という形で罰として償ったことになります。
偽りの人生
2つ目にマリアンヌに化けたスパイの人生は嘘にまみれた偽りの人生だったからです。
スパイですから嘘をつくことが悪いことではないし、寧ろ相手を騙してナンボでしょう。
しかし、彼女は自分可愛さに娘と夫以外も利用してしまうタチの悪さがあります。
そんな嘘の上に何をしても本物の愛情にはならないことの証明だったのではないでしょうか。
だからこそ英断としてマリアンヌに化けたスパイはマックスとアナを生かしたのです。
嘘と裏切りの中に光る真実
しかし、そんな嘘と裏切りの中にもマリアンヌが貫いた真実が1つだけあります。
それこそが正にマックスへの愛であり、彼への愛だけはずっと貫いていました。
だからこそ死の直前にマックスのことを「ケベック人」と言ってみせたのです。
祖国への愛も何もなかったマリアンヌの中にも1つだけ芯となるものがありました。
その愛情が本物だったことはマックスに伝わり、だからこそハッピーエンドの結末に繋がるのです。
「マックスが射殺した」と報告させたフランクの想い
そしてこの場面でもう1つ注目したいのが「マックスが射殺した」と報告させたフランクです。
本来ならマックスは大罪人として逮捕されてもおかしくなく、直前まで本当にそんな空気でした。
それを変えたのがフランクの報告であり、果たしてここにはどんな想いがあるのでしょうか?
守るべきは法律ではない
まずここで大事なのはフランクが守るべきは法律ではなく命と愛であることに気付いたことです。