出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07B3ZBKCN/?tag=cinema-notes-22

映画『ビジランテ』は入江悠監督制作による2017年公開の作品です。

キャストは大森南朋・鈴木浩介・桐谷健太と割と安定感のある人達で固められています。

埼玉県深谷市を舞台とした地方都市の暗部を巡る3兄弟の遺産相続を巡る物語です。

近年には珍しい本格派ノワールを志向した1作で、画面全体も非常に暗めに統一されています。

本稿では長男・一郎が土地にこだわる理由をネタバレ込みで考察していきましょう。

また、三男・三郎が父親の首をナイフで刺した理由や次男・二郎が壇上で涙をこらえた意味も読み解きます。

血は争えない

〈ハイブリッドな親子〉の社会学: 血縁・家族へのこだわりを解きほぐす

本作全体の特徴にしてテーマは「血は争えない」ではないでしょうか。

これ自体は当たり前にあるものですが、本作はよりその特徴を剥き出しにする構成となっています。

本作に出てくる3兄弟はいずれもDV父による火傷のような傷を心身共に刻み込まれているのです。

それが特に強く出たのが長男ですが、他の次男と三男もまず普通の生き方はしていません。

二郎は父に恐怖を抱く余りに威厳のないヘタレで、妻が他の男と寝ても黙認する有様です。

そして三郎に至ってはデリヘルの店長というアンダーグラウンドな生き方をしています。

本格派ノワールと名前こそつけているものの本質は家族・兄弟の生き様がメインの見所です。

一郎が土地にこだわる理由

500㎡以上の広い土地を引き継ぐ人のための得する相続

一郎は父の血を最も濃く受け継ぐ長男ですが、横浜で大量の借金をこさえるダメ人間でした。

しかし、そんな彼でもやたらと遺産相続として譲り受けた土地を渡そうとはしません。

ここでは一郎が頑なに土地を守ることにこだわる理由を見ていきましょう。

祖父から譲り受けたもの

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まず父から譲り受けた土地は単なる私有地ではなく、祖父が満州からわざわざ買ってきた土地です。

どんなに父が最低だったとしても、彼が受け継いだ土地への思いは間違いなく本物でした。

だからこそ代々受け継いできた土地を都市開発の為に手放す訳にはいかないと主張しています。

即ち3兄弟の中で最も責任感が強く父親への愛が強かったのも彼ではないでしょうか。

様々な問題点はありながらも長男は家族愛の強さにおいてブレない人でした。

商業主義迎合への批判

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2つ目に一郎は商業主義の為に土地を売り渡すわけにはいかないと断固拒否していました。

時代の流れに安易に迎合する愚かな大衆心理への批判を意味しているのではないでしょうか。

またその愚かな大衆心理を扇動しているのが他ならぬ市議会議員の二郎であるのもポイントです。

つまり一郎VS二郎を通して多数派VS少数派という社会の縮図を形にしていることになります。

30年という時の流れが皮肉にも3兄弟を利権争いさせる方に仕向けてしまったのです。

執着の愚かさ

そして3つ目にラストの結末まで含めて一郎が背負っていたのは「執着の愚かさ」だからです。

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