ここで涙を流しそうになったのはこんな兄でも大切な兄と実感したからでしょう。
父の死に際して同様しなかった二郎が初めて身内のことで心動かされたのです。
やはり血は争えないものであるとここで知ったのでしょう。
土地の相続への決意
2つ目にそんな長男から図らずも土地を相続したことへの決意ではないでしょうか。
二郎は劇中でも何かと損な役回りで、基本報われないこと方が多い中間管理職気質です。
たとえ妻が他の男と寝ていたとしても決して市議会議員の立場に背くことはしませんでした。
だからこそ彼には最後の最後で土地の相続という権利が巡ってきたのでしょう。
自分の為ではなく他者の為に動いていたからこそ、痛さと引き換えに幸せを手にしたのです。
執着ではなく愛
3つ目に涙を堪えたポイントが妻である美希を見たことによるものだということにも注目です。
ここで示されているのは、二郎が持っていたのは「執着」ではなく「愛」ということでした。
土地の利権に執着した一郎と父への反発にばかり執着した三郎との違いはそこにあります。
二郎はどんなに周りからいじられうらぶれても周囲への感謝と愛は忘れませんでした。
どんな時も市議会議員としての顔を崩さず謙虚に真摯に町の発展に努めてきたのです。
最後の最後で真っ当に頑張り続けてきた者が報われる結果となりました。
3兄弟の自警団
本作のタイトルは「自警団」という意味ですが、本作の3兄弟はそれぞれ違う形の自警団でした。
長男は父親の土地相続を守り、二郎は妻と町の方々を守り、そして三郎はデリヘル嬢達です。
抱えるものはそれぞれに違えど何かを「守る」ことに必死だった3人といえます。
しかし、いずれもが政治家とダメ親父という2面性を持った父の因果からは逃れられていません。
二郎が本当に父の因果から逃げ切ることが出来るかどうかはこれからではないでしょうか。
土地を相続したから安心ではなく、守るべきものが増えたということですから責任は重くなります。
彼は今後もきっと父親の血と生涯向き合って生きていかないといけないでしょう。
未だに続く労働組合
本作は3兄弟の生き様を通して未だに続く労働組合の問題を炙り出しました。
都会ではそこまで強くないですが、地域密着の田舎ではこうした利権争いがよく起こります。
政治家と暴力団の泥沼の関係など今では闇営業として摘発されることも少なくありません。
それを広義の問題ではなく3兄弟の生き方というパーソナルな所に上手く落とし込みました。
そしてまたそれを表現出来る役者達であったことが本作を傑作たらしめた所以でしょう。
設定や脚本自体は割とありがちでも、それを役者の演技力と演出力でそう感じさせません。